1年、1日が一生の単位。恵まれた環境にいるからこそ世界の「トップ」を目指す。
――日本、アメリカで、努力し続ける浜口さんの原動力というのは、どういったものでしょうか?
浜口直太氏: 世界中には、学校へ行きたくても学校がない、ご飯食べたくても食べ物がない、仕事したくても仕事が全くないという貧困地域がいっぱいあります。今この瞬間も餓死、病死、戦死していっている人がいっぱいいる。そんな中、自分がたまたま平和で恵まれた国、日本に生まれ育ったということで、のうのうと生きていていいのかという思いに常にかられます。
それから、9.11の世界同時多発テロ事件で、ワールドトレードセンターに激突したアメリカン航空ボストン発ロサンゼルス行きの飛行機に乗っていた友人がいるんです。まさかあんなところで彼が死ぬと思いませんでしたが、本人もさぞかし悔しかったことでしょう。私は、崇高な志半ばで亡くなった彼の分も倍頑張らなければ、また彼のやり残したことを実現しなければといつも自分に呼びかけています。とても近い存在でしたので、彼の思い・志が乗り移ったのかもしれません。
――周りの環境によって、何かをやりたくても出来ない、出来なかった人が世界にはたくさんいますね。
浜口直太氏: どれだけ自分が恵まれているか、いつも感謝の念が絶えません。五体満足で住む場所があり、毎日ご飯も食べられて仕事もある。地球上に60億人以上いる中、そんな恵まれた環境にいる人がどのくらいいることでしょう。それこそ一握りの人ではないでしょうか。
なぜ私が世界一を目指したいかと言いますと、世界一を目指した時、東京一とか日本一と比べて、努力の度合いが雲泥の差になるからです。私は世界一を目指すための努力をしたいと願っています。世界一を目指す一方で、今自分がどれだけ恵まれた環境にいるかを忘れず、感謝し続けることの大切さを痛感しています。
――恵まれた環境にいても、そこに甘んじることなく努力を続けていらっしゃる浜口さんが、その努力を継続するためにどういった工夫、取り組みをされていますか?
浜口直太氏: 私、毎年11月に全財産寄付しています。だから毎年12月には、お金がゼロになるんですね。22歳からやっていて、30年間やり続けてきました。ですので、稼げたとしてもお金持ちではありません。そのお蔭でまた12月から頑張って働き始められるエネルギーになっています。1年間一生懸命働く。そして今年も生き抜いたと。1年も私にとって大事な時の単位ではありますが、1日はもっと大切にしている単位です。1日一生みたいに生きたいからです。明日生きていないかも知れないので。
本は「人生を変えるもの」。「言葉」ではなく「想い」で、『一字入魂』。
――では、最後の質問です。浜口さんにとっての本はどういった存在になりますか?
浜口直太氏: おもしろいとか楽しいとかで読まれる人もいると思いますが、本は読者の「人生を変える」使命があるものと認識しています。例えば私は18歳の時に山田勝さんの本を読んで国際経営コンサルタントになる決意をしました。たった1冊の彼の本が私の人生を一瞬にして変えました。自分の転機を振り返りますと、毎回本がきっかけで人生が大きく変わっています。本の値段は1000円か1500円位。ですので、費用対効果、投資対効果はとてつもないものがあると思います。読む側の心次第で人生が信じられなく変わります。
――書き手として浜口さんはどういったことを意識されてますか?
浜口直太氏: 読者の人生を変えるきっかけになるためには、「一字入魂」で書かないといけないと肝に銘じています。自分の書く一言一言がすごく責任が重く、読者の尊い人生を思うと本当に言葉だけで軽々しく書けないと思ってまいす。従って52歳からの課題は「一字入魂」です。私は講演もしていますから、講演での課題は、「一言入魂」です。そういった一つひとつの積み重ねがと大きな力になっていくと思います。もっと言うと、そこに言葉ではなく強い強い想いがあれば、まさに「一言入魂」、「一字入魂」になるのではないでしょうか。
9.11の世界同時多発テロで亡くなられた方々の遺族をワールドトレードセンターに招待して追悼式を行った際のことです。クリントン元大統領が政府を代表して追悼の辞を述べることになっていました。当時遺族は悲しみのどん底でした。ですので、どんな言葉も彼らを癒すことは不可能でした。それを察知したクリントン大統領は、結局一言もスピーチしませんでした。
その代り彼は、遺族達を強く強く抱きしめました。遺族達は感動し、クリントン大統領の無言のハグは最高の激励となりました。彼は言葉の限界を知っていたのです。だから、想いをハグによって表したのです。
言葉で想いを表現することに限界がある以上、言葉を武器にする我々、著者はいつも限界に挑戦しているのです。言葉ではなく、想いで書く、話すということが、これからの自分の課題だと痛感しています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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