奥野宣之

Profile

1981年大阪府生まれ。同志社大学文学部社会学科でジャーナリズムを専攻後、出版社、新聞社勤務を経てフリーランスに。独自の情報整理術を公開した『情報は1冊のノートにまとめなさい』(Nanaブックス)で著作デビュー。第2弾『読書は1冊のノートにまとめなさい』(同)、第3弾『人生は1冊のノートにまとめなさい』(ダイヤモンド社)のシリーズ3冊は累計50万部を超えるベストセラーとなる。メモやノート、文房具の活用法から発想法、デジタル・アナログを問わない情報活用、知的生産術まで、わかりやすく書き下ろした著作は、若手ビジネスパーソンを中心に支持を集めている。

Book Information

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好きな作家はいるけれど、生きている人はほとんどいない


――読む本はどうやって見つけていらっしゃいますか?好きな作家さんの本がメインでしょうか?


奥野宣之氏: ネタ探しという感じでもなく、好きだから読むという感じです。最近だと開高健とか、鉄道紀行作家の宮脇俊三とか。夏目漱石、小松左京、ジョージ・オーウェル。雑食性なので、全然一貫性がないんです。僕は、何か興味を感じたものがあると、ネット検索をすると同時に、いい本がないかを調べちゃうんですよ。今だったら、手書きのことに興味を持ったから図書館で借りたり、社会学に興味を持ったら社会学関連の本、建築に興味をもったから建築関連の本、電力問題にちょっと興味があるから電力問題の本だったり。あとはプロレスが好きだからプロレスの本を読んだりとか、そういう風な「テーマ読み」をします。だから著者で読むということはほとんどいないです。好きな作家というのはいますけど、亡くなっている方がほとんどですね。そういう直感的なものに従って読書すると、計画的に読むよりも、自分で想像もしなかったようなものにで出会うことができて何かいいなと思います。

――古典や名作がお好きですか?


奥野宣之氏: そうですね。マイブームがあって、何年か前は、藤沢周平の時代小説ばっかり読んでいた時もあるし。去年は開高健の作品ばっかり読んでいましたね。そういう風に、全然、読むものに節操がないんですね。

――たくさんのアンテナが張り巡らされていて、常に触手が伸びているという印象があります。


奥野宣之氏: 本以外に娯楽がないんです。スポーツはしないし、テレビはあまり見ないし、映画とかも1時間半とか座っているのがきついんですよね、意識が散漫だから、すぐほかのことをしたくなる。だから本を変えたりページをめくったりするだけでポンポンほかの分野に切り替えられる本が、僕には一番向いていますよね。「座って見ていてください」というのはものすごく苦手です。それに本は能動的だから僕に合っています。子どものころから授業中ずっと座っているのがすごくイヤで、「自分にしゃべらしてくれ!」みたいに思っていました。

ドン・キホーテは、僕のお守りです


――奥野さんの人生の転機、もしくは自分にすごく影響を与えて、今でも与え続けているような本とは何でしょうか?


奥野宣之氏: アランの『幸福論』とかも影響はありましたが、やっぱり『ドン・キホーテ』が一番影響を受けたと思います。就職活動とかがうまくいかなくて京都から実家に帰って、くすぶって落ち込んでいる時に、あまりにも暇だから読んだことがきっかけでした。22歳の時です。その時にたまたま古本屋で買った『ドン・キホーテ』があったので、読んでみたら、ガーッと4日ぐらいで読んじゃった。本当はめちゃくちゃ長い本なんですけど、僕が読んだのは、ダイジェスト版だったんです。僕は『ドン・キホーテ』コレクターでもあるので、いろいろ集めています。ギュスターヴ・ドレの挿絵が描いてあるもの、そのほかグッズも集めています。見つけたら必ず買っていますね(笑)。文学研究をしているわけじゃないですけど、僕にとってはお守りみたいなものですよね。

――1番の魅力はどこにありますか?


奥野宣之氏: 「1人の男が世界のすべてと戦う」というのが、大風呂敷ですごくいいですね。そこに1番感動しました。それに、これはやっぱり「本を読む本」でもあるわけですよね。主人公は、騎士道小説の読み過ぎで頭が変になったわけです。つらいときに、そういう本を読んで自分を変えていくというのは、どこか主人公、ドン・キホーテの体験と通じるんですよね。たった1人で世界と戦うという愚かさとかっこよさが、とても爽やかなんです。

――奥野さんが執筆することと、『ドン・キホーテ』の奇抜な行動と、直接的な影響がありますか?


奥野宣之氏: 結局、本を書くって、自分の思っていることを世界にぶつけるという行為じゃないですか。これはまさにそんな小説なんですよね。「風車のことを巨人だと思っている」と、彼は、ばかにされるけど、最後の方になると、みんなが「むしろそっちの方が面白くていいね」、ということになるんですよ。だから、後編では、退屈した貴族の人が、ドン・キホーテの妄想につき合うことで、生きがいを見つけるというストーリーがあった。ずっと正気の従者、サンチョ・パンサも、最後は病に倒れたドン・キホーテに「もう1回妄想の世界に帰って大冒険しましょう」って誘うんだけど、ドン・キホーテは、もう旅には出られないと言って死んでいく、ここにすごい感動するんですよ。逆転するんです。最初は現実が圧倒的で妄想がちっぽけだったものが、最後は妄想が圧倒的になって現実がどうでもよくなる。「これはすごい!」 って思ってしまいました。

――深いですよね、ものすごく。


奥野宣之氏: うん。でもやっぱり生きるっていうのはそういうことじゃないかなって思いました。人の都合とかで何かをやらせられるんじゃなくて、自分の思いこみとかを世の中にぶつけて、むしろ世の中をのみ込むぐらいじゃないとダメだなって、そういうダイナミックさに感動しましたね。

身の回りのすべてに興味は尽きません


――興味がわくと、とにかく手に取って読みまくるという奥野さんですが、今、気になっているテーマはありますか?


奥野宣之氏: 最近、毎朝違う新聞をコンビニで買うようになって、面白いな、とブログにも書いたんです。それと、去年は、結構歩きまわったり、山登りとかしていましたので今年も何かやりたいなと考えています。あとは、ジョージ・オーウェルをもっと読んでいきたいなと思っています。とても好きなんです。ただ、こんなにメジャー作家なのに全然研究書が無いんですよね。彼について、日本語でまともに書かれた本って無いんですよ。イギリス人が書いたものは結構あるんですけど、日本人のジョージ・オーウェル研究って全くない。だから、読んで彼のことをもっと広めていきたいなって。

――いいですね。奥野さんの手で、ぜひすすめていただきたいです。


奥野宣之氏: あと興味のあることは、ネットとかもやりすぎているから何とかしたいなとか。何かいろいろありますけどね。まあ、すべてのことに。

――すべてのあらゆること…奥野さんらしい表現ですね。では、むしろ関心がないことはありますか?


奥野宣之氏: スポーツにはあまり関心がないですね。でも、本当に様々なものに関心や欲しいものがいっぱいあるんです。

――欲しいものとは何ですか?


奥野宣之氏: 短波ラジオが欲しいですね。高性能なもので、SONYとかの製品が理想ですね。世界のラジオが聴けるっていうものです。2~3万ぐらいあれば買えるけど、何となくもうちょっと勉強してからにしようと思ってます。やっぱりゴミになっちゃうと無駄遣いになるから、いいものを買った方がいいかなと思ったりして。あと双眼鏡も最近買いました。鳥を見たりしています。

――山登りの時とかに使うのでしょうか?


奥野宣之氏: 結構近所に鳥がいるんですよ。古墳とかに見に行ったりして経験を重ねています。あと、歴史とかの本を読みたいんだけど…、もっといろいろ読みたいし。やっぱり、ほとんどのことに興味があるんですね(笑)。

著書一覧『 奥野宣之

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