中島孝志

Profile

1957年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、南カルフォルニア大学大学院修了。PHP研究所、東洋経済新報社を経て独立。経営コンサルタント、経済評論家、ジャーナリスト、作家 (ペンネームは別) 、出版プロデューサー、大学・ビジネススクール講師、等々。「キーマンネットワーク定例会」(28年の老舗勉強会)のほか、「原理原則研究会」(東京、大阪、博多)、「松下幸之助経営研究会」なども主宰。講演・セミナーは銀行、メーカー、外資系企業等で超人気。著訳書は230冊超。プロデュース500冊超。読書は年間3000冊ペース。毎日更新のインテリジェンス音声情報サイト「中島孝志の 聴く!通勤快読」が大人気。

Book Information

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書店は情報発信基地。小さな本屋は「密度」で勝負。


――大型店以外は生き残るのが難しそうにも感じますが、小さい本屋が対抗する方法はあるでしょうか?


中島孝志氏: どこにでもあるような書店作りというのはできると思うんですよ。ベストセラーばかり置いておくとか。それより、店長がこの本を推していますとかさ、かなり読書好きな書店員がいて、その人たちがポップで自分の書評なんかを載せて一推しみたいなことをやるとか、書店員がただの販売員じゃなくて、本が好きで、「私も読者の一人です」みたいな目線の人たちのほうがいいですよね。本屋大賞なんて賞もあるし。ああいうのを小さい書店でも、こだわりをもってやってもらうといいんじゃないかと思います。読者ってベストセラーを買いに行ったとしても、「え、こんな本もあるんだ」みたいなサプライズを期待している。そうでなかったらAmazonで買えばいいわけで、わざわざ足を運ぶというのは、そこに行かないと出会えないような、そういうチャンスがあると思っている。だからそれを書店側がもっと意識してやってもらえるといいなと思うんですよね。

――店長や店員からメッセージが発されている店ということですね。


中島孝志氏: 書店というのは情報発信基地だからね。情報発信基地が一番、情報が集まるわけですよ。お客さんというのはその発信力みたいなものにひきつけられて行くわけだから。だから書店が発信力を持たなくなっちゃうと、その地域もかなり魅力が薄くなる。シャッター通りみたいなのは商店街としての発信力がなくなっちゃっているから、お客さんが来なくなる。そこそこ大きい書店には60万冊ぐらいある。それだけメニューがあると、やっぱり情報発信能力があるから、お客さんが来てくれる。5万冊から20万冊ぐらいだとか、そういう街のちっちゃい書店さんだと、やっぱり情報発信能力がなくて負けちゃう。だから小さい書店で生き残っている人たちって相当、個性的ですよ。もうこれしか置いてない、みたいな。この品ぞろえについてはめちゃくちゃ強いというような。そうすると、それを知っている人たちというのはちょっと離れたところからでもやって来る。軍事モノだけ20万点置いていたら紀伊國屋でも絶対にかなわないわけですよ。そういう個性ある作り方というのをやるかどうか。それはもう完全に書店のおやじさんとか経営者の趣味でいいと思います。それで成功しているのが神保町にある侍グッズを置いてある書店ですよね。

――そんな店があるんですか?


中島孝志氏: 書店なんだけれども、ついでに戦国武将ものばかり置いといた書店さんです。いわゆる歴女のために作られた書店ですね。歴史女子。それから膨らんじゃって戦国グッズ、そらからフィギュア、さらに戦国喫茶みたいなものまで併設するようになっちゃって。わけがわからなくなっちゃったんだけれども(笑)。でも、好きな人たちがひっきりなしに来る。だからそこでは歴史の講演会とかいうの、ミニサロンみたいなものを結局、開くようになっちゃったんですよ。そこに行くと戦国武将についてのミニ講義みたいなものがあって、帰りにそれに関連する本が積み上げてあるわけです。うまいこと結びつけてある。それで今はチェーン店で全国展開していますよ。東京だけじゃなくて、どこにだってやっぱり歴史好きとか戦国武将好きみたいな人がいるだろうと。これは、情報発信基地だから皆さん集まってくるわけです。そういうやり方で勝ち抜くしかないと思いますね。何か中途半端に小さいくせに百貨店をやろうと思うから失敗する。ちっちゃければやっぱりシングルテーマのほうが密度として勝てるんだからね。量として勝つんじゃなくて密度として勝つような経営のやり方を考えたほうがいいですよね。昔は自然とそういう人が書店経営をしていたりしてたわけです。純文学が好きとか、クリスチャンなのでキリスト教の本ばかり置いてるところがあったりする。そういうやり方じゃないですか。

「ベストパートナー」本との出会い。


――まさに中島さんがそのような個性的な書店に通いつめたわけですからね。中島さんが学生時代に最も影響を受けた1冊を挙げるとするとどのような本でしょうか?


中島孝志氏: 中学時代に読んだ本で、サイマル出版会から全5巻で出ていた『高校放浪記』というのがある。これは三重県の進学校に通っていた稲田耕三さんという人がいましてね。その人が出版社に自筆で書いてきた原稿なんです。不良で高校を次から次へと転校して、最後に米子かどこかの高校に行くのかな。で、塾の先生になった時に自分の高校時代のことを書いた。弘兼さんが漫画にもしています。この本は本当に、私の本好きを決定的にしましたね。町田にある三橋宝永堂という眼鏡と宝石なんかを売っているところが、自社ビルなんですけど4階5階にデカい書店を経営していまして、そこで見つけたんです。それ以来日曜日になったら自転車を飛ばしてそこまで行って、色々な本を買っていました。毎週毎週、書店に行くようになったのはそれからで。「ああいうおもしろい本ないかな」って。まあ、あれは異常に感動的な本でした。驚いちゃいましたね。

――なぜ『高校放浪記』が目に入り、手に取ったのでしょうか?




中島孝志氏: もうすぐ高校生になるということで、ちょっと背伸びしたんですね。しかも放浪記っておもしろいとなってね。どんな放浪をしたんだろうと気になった。まあ私は、高校を放浪しそうな感じでもなかったので、逆におもしろそうだなと思ったのかもしれない。いわゆる小説しか読んだことしかなかったから、文章って小説だけだろうと思ったら、ああいうノンフィクションというか、こんなのがあるんだと思ってね。非常におもしろく読んでいました。私、本を買ってもすぐにブックオフに出しちゃうかAmazonで売っちゃうんだけど、それだけはもうボロボロになっているけど、売らないでちゃんと残してあるんです。それでブログに高校放浪記について書いたら地元の人から「懐かしいですね。稲田先生は今こんなことをやっておられます」ってメールが来ちゃったりして。

――そのほかに、処分せずに保存している本はありますか?


中島孝志氏: 司馬遼太郎さんの全集と三島由紀夫の全集。三島由紀夫の全27巻の全集は新潮社から出て大学時代、アルバイトで買いましてね。当時ね、池袋の芳林堂に先輩が勤めていたので2割引きで買えたんですよ。それでも17万円位しましたね。それとあとは道元とか親鸞とか、いわゆる日本の思想史みたいなものと、あと、民俗学みたいなものはライフワークなので。これについては書店、古本屋にも売らずに集まる一方です。

――あらためて、読書は中島さんにとってどういうものでしょうか?


中島孝志氏: うーん。やっぱり「人を磨く砥石」だと思いますね。あと、暇つぶしにも一番うってつけだし。飯のタネでもありますしね。だからもう、生活そのものみたいなところもある。やっぱり知的好奇心みたいなものを満たしてくれたりするので刺激的ですよね。非常にビビッドな情報というか。情報をもらうというのではなくて、啓発してもらうというのかな。なんかサジェスチョンがいっぱいあったりして。ほら、「フィールド・オブ・ドリームス」という映画の中に 「If you build it, he will come.それを作れば奴は来る」というセリフがある。オハイオ州のトウモロコシ畑をぶっつぶして、野球場を作っちゃうわけ。そうするとシューレス・ジョーと自分のおやじが来ちゃったっていう話なんだけど。私の場合は、「If you read it, he will come.それを読めば奴が来る」なんだよね。それを読むと、何かが下りてくるみたいなのがあるわけで。それがすごくおもしろいんですね。

――人生において切っても切り離せないものなんですね。


中島孝志氏: そう、パートナーみたいですね。奥さんやだんなさんのことをベターハーフと言いますけれども、本もベターハーフですね。伴侶、ベストパートナーというかな。そんな感じがしますね。

尽きぬアイデア。次は「怨霊」をプロデュース!?


――最後に今後の新しい取り組みというか、計画があれば教えてください。


中島孝志氏: 一つは、自分の電子書籍のサイトを作ろうと思ってますね。ブログの中に電子書籍サイトというのを作って。今はAmazonのアフィリエイトみたいなのを横に乗っけているけど、あれ取っ払っちゃって、クリックすると1冊100円ぐらいで読めるような。そんなのを作れたらいいですね。出版社は怒るかもしれないけど。230冊も出しているから、タイトルを変えちゃって中の本も3冊ぐらい取捨選択して1冊にしちゃって、新たに作り直しちゃえば問題ないだろうと思って。230冊だから100冊ぐらいにしておいて、100円で読めるみたいなね。安いでしょう、100円。

――またそれも結局システム費に消えてしまうのではないでしょうか(笑)。


中島孝志氏: まあいいの、それで(笑)。ファン作りみたいなもんですよ。もう一つは、ちょっと変わった喫茶店を作ろうかなと。それはさっき言ってたシングルテーマなんですよ。で、店の名前も考えてある。こんなの言っちゃっていいのかな、「喫茶怨霊」。日本で悪霊と言われているような人たちがいる、その人たちをまつるものを全部、中に作っちゃって、喫茶店のウェイトレスを巫女にしちゃおうかなと。で、中でろうそくを立てたりして。塩を盛っといてね。毎回、おはらいをして。その悪霊の人たちの命日なんかもちょっと書いたりして。毎年、定期的に命日の時に参って来る、おさい銭を持って、みたいな。で、お化けとか悪霊の話を月1回、研究している大学教授が友達にいるんで、そいつに話させようかと。全然お客が来ないかもしれないけど(笑)。

――どこら辺に出される予定なんですか?


中島孝志氏: 東京のど真ん中。神保町辺りに出そうかなと思って。できるとしても来年でしょうね。あとほかに何かやるかは、ちょっとわからないですね。何をやるかわからない、全然。これからもゴチャゴチャとやっていくでしょうね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 中島孝志

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