高城幸司

Profile

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、株式会社リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年『アントレ』を創刊。事業部長と編集長を9年間歴任以後、人材ビジネスで転職事業の事業部長も経験。その後、株式会社セレブレインの社長に就任した。その他、講演活動やラジオパーソナリティーとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。きき酒師・酒匠であり焼酎アドバイザー。日本酒サービス研究会常任理事。日本酒の会を12年代表を務める。

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変人や本との出会いを通じて「理想の人生のイメージ」を形にする



人事を中心としたコンサルティング事業を展開する、株式会社セレブレインの代表取締役社長である高城幸司さんは、リクルート勤務時代に、独立、起業の専門誌『アントレ』編集長として活躍し、現在はビジネス書のヒットメーカー、本との繋がりも非常に強い経営者です。高城さんに、起業のきっかけ、影響を受けた本、読書や執筆のスタイル、造詣の深い日本酒の楽しみ方などについてお聞きしました。

再編の時代。生き残りを賭けた組織作りが進む


――会社を3社経営されていますが、事業内容をお伺いできますでしょうか?


高城幸司氏: われわれのセレブレインというグループは、人と組織、企業の成長のお手伝いをしている会社です。上場企業の大手、一部ベンチャー企業もあるんですけれど、従業員でいえば最低でも100名以上いるような、「会社」としての機能を持っている企業に対して、人事戦略を練ったり、賃金の施策を作るということを主にやっている会社ですね。それと、われわれは人と会う機会が多いということもあって、人の集まる場所を作ろうということで、「セレブール」という名前のレストランを経営していまして、今、赤坂に3店舗あります。

――多くの会社とかかわり、経営の状況をつぶさに見てきた高城さんですが、企業社会において、今はどのような時代だと思われますか?


高城幸司氏: いっとき、ベンチャー企業がすごく株式公開した時期もあったんですけれど、今はちょうど、日本の企業も世界で戦っていくために再編の時期になってきています。今まで競合していた会社同士が事業を一緒にしたりすることが普通に起きる時代になってきていますね。外資系の会社と日本の会社であったりとか、東京の会社と大阪の会社であったりとか、三菱系の会社と住友系の会社だったりとか、そういう会社が一緒になれば、当然、社風も違うし、やり方も違う。それをうまく1つの会社にしていくために、風土や仕組み、賃金のルールなどを合わせていく必要がありますので、われわれはそういったところの作り込みをしています。失われた10年と言われている1990年代の前半から、銀行がどんどん統合したじゃないですか。三井と住友がくっつくというような、考えられないことがいくつかあったんですけど、今、そういうことが銀行だけじゃなくて大企業同士で起きている。必ずしも大企業が勝っていくとは限らない時代の中で、皆さんが生き残りを賭けて組織作りを見直す時期なんだと思いますよね。

「壊れない目標」を漠然とイメージせよ


――高城さんが、人事を中心としたコンサルティング事業を起こすことに決めたきっかけを伺えますか?


高城幸司氏: 自分について振り返ってみると、今の会社を作るときも、「絶対にこうでなきゃいけない」というものを持っているわけではなくて、こんな職場でこんなメンバーと仕事をしていたいとか、そういうイメージを描いていました。具体的な数値として売り上げ15億円で、経常25%とかというんじゃなくて、ざっくりと、従業員が仕事をしているシーンや、自分の家族のことなどをイメージするようにしていたんです。人生は長いので、どんどん年と共に成長できたり、知的好奇心が高まる仕事の方が、僕はいいなと思っていて、そういう仕事を自分なりに見つけて、自分の立ち位置を作って事業をしたいと漠然と思っていたんですね。それで、リクルートにいた時から、色々な企業の方とお会いしていたんです。それで、仕事の中で、自分の中の「自分の会社」というイメージが、自分のお店を持って、レジ打ちをして、例えばラーメンを作るっていうことでは全くなかった。自分にとってのお客さま像というのは、個人ではなくて、企業がフロントに立っているという風に認識していたので、独立したら企業と対等にわたり合えるビジネスをやっていこうというのは決めていました。それでどういうことをやろうか考えたのですが、やりたいことが大きくいえば2つあったんです。1つがリクルートにいた時の販売促進、マーケティングの仕事。もう1個がHR、人材系の仕事。そう考えたときに、マーケティングとか営業の仕事というのは、その会社の本業なので、その会社しかできないけど、人事の仕事の立ち位置なら、色々な企業と人事の仕事を通じて、人と会う機会がたくさんできると思ったんです。人事の仕事をしていると考えれば、介護でも医療でも、製薬でも商社でも、金融だって、どんな企業の人でも会いに行けると。僕が例えば、食品業界に特化したマーケティングツールを持っていたら、やっぱり世界は閉じていっちゃうと思います。たくさんの企業の成長にかかわっていく可能性のある仕事をやっていきたいなと思ったときに、狙いが人材系のビジネスになったというわけですね。

――最初から具体的な目標を立てたのではなく、仕事や人生について大くくりにイメージして、可能性のある方向を選んでいかれたのですね。




高城幸司氏: 自分はメジャーリーガーを目指すイチローみたいな選手じゃないので、目指すことがあって今の自分があるとは全然思ってないんです。今、漠然とした将来の不安を持った若い人は多いと思うんですけど、今日、明日、明後日にどういうことをしていくのかが一番大事なことだなと最近すごく思っています。明確な目指すものを持つことも、1つの手だと思うんですね。例えば、仮に僕が25歳の普通のサラリーマンだとして、32歳までには起業して、35歳までには株式公開するという風に決めるのもいいと思うんだけど、ただそれって、その計画が壊れたときに、大丈夫なんでしょうか。それが絶対とは限らないでしょう。強い意志を持つことによって、あるべき姿を持つことによって、計画を決めて実行できるというのは事実だと思います。目的意識を明確に持って、そこに向かって走り続けた方が自分の強さや良さを生かせる人もいると思うんですよ。それはそれで人それぞれじゃないかと思います。ただ、その計画をするためのあるべき姿が、あまりにも綿密過ぎちゃうと、そこにたどり着かなかったときに、そのゴールってどうなるのかなって思ったりするわけです。例えば仮にね、電子書籍の事業に人生を賭けるって言っていて、電子書籍よりもっと優れたツールが出てくるかもしれない。そうしたらどうするのってなりますよね。だから、何をやるかの「何」っていうのは、どんどん変わっていく可能性があるので、ざっくりとした形の中で、自分がどうあるべきかを考えた方がいいんじゃないかなと思っています。

メモは重要な言葉だけ。手帳術なんていらない


――高城さんはコンサルティングのお仕事と同時に執筆も行っていらっしゃいますが、普段、執筆はどこでされているのですか?


高城幸司氏: 内容が決まって、実際に文章を書くのは、自宅のパソコンでやっています。ある程度、絵ができているときはその方がやりやすいんですが、例えばダイヤモンド社と一緒に、今度は20代向けに何かやろうかとか、企画趣旨をまとめるとか、そういう時期というのは、アイデアを広げたり、目新しい発想をしたりしないといけないから、必ずしも自宅のパソコンの上で答えが出るとは限らない。気分を変えるために喫茶店で作業をしたり、場合によっては、遠方に行っちゃうこともあります。そのときの状況によって違いますが、ケースバイケースで使い分けたりしていますね。

――アイデアを企画として形にする過程で必ず行っていることや、心掛けていることはありますか?


高城幸司氏: 自分の思ったことを、口に出して、それを周りの誰かと話しているうちに、精査されることがすごく多いと思うんですよね。壁打ちをするというか、自分はこんなこと思っているんだけど君はどう思う?という風に壁打ちの相手になっていただけるような方が、友人に何人かいて、そういった方とお話ししながら自分のビジネスのアイデアを話して、思考を深めます。

――その時に、思いついたことは頭の中に入れて覚えておきますか?それともメモを取ったりされますか?


高城幸司氏: 重要な言葉だけ書いて残しておくっていうのかな。例えば、先日「世間話が仕事の9割」という本を出したんですけど、例えば、「最近の若い人っていきなり本論から話を出すんだよね」みたいな、こうだよね、ああだよね、という話をしてることはあんまりメモらないですね。だけど、「結局仕事って世間話が大事だよね」、とか、「世間話で大体決まっているんじゃないの」みたいな、話をしていく中で、重要な言葉が出てきたときは、残しておかないと忘れちゃうんですね。「世間話って重要だからもっと使った方がいいよ」、じゃなくて、それを一言で言うとどうなのということ、すごく分かりやすく言えば本のタイトルになる言葉だとか、キャッチーな言葉を見つけたら、それだけメモっておく。それ以外のことは、メモっても意味が何なのか分かんなくなっちゃうので、タイトルに使うとか、本の表紙に使うとか、目次に使いたいキーワードとか、この言葉を抑えておきたいとか、そういった言葉は、パッと消えてしまう可能性があるので、メモをしておくようにしています。

――メモの種類ですけども、手書きの手帳をお使いですか?


高城幸司氏: そうですね。でも公開するほどの手帳じゃない。よく皆、メモとか手帳とかを大事にすると言うけど、僕はそこに本質があるわけじゃないと思っているので、なんでそんなにメモにこだわるのかが理解ができない。手帳の書き方とか手帳術だとか、僕は不要だと思っている。終わったら捨てちゃうからね。そもそも手帳を後で見返す人っているだろうか。もったいないものを取っておく人って多いですよね。例えば百貨店の紙袋がもったいないから、いざといったときのために残しておくと言って、家の中が紙袋だらけになっちゃう人がいると思うんだけど、使わないじゃないですか。それと同じだったりすることって結構あるんじゃないかと。メモを持っておく理由って何なのかといったら、そのメモが使える状態になればいい。そうすると、大事な言葉とか忘れてはいけないキーワードというのはあるので、そういうのをできるだけ取っておくというだけです。メモの取り方に何かポイントがあるのかというと、僕はあんまり感じていないですね。

――文章を書かれるときに念頭に置かれていることはありますか?


高城幸司氏: 伝えたいことが断定できている場合、例えば、営業とはこうである、みたいに、自分としては確信を持って書くものは、である調で書くようにしているんですね。だけど、もうちょっと緩く物事を考えてもらいたいとか、そういう考え方もありだよね、みたいなことを書くときは、ですます調にしています。そういう言葉のトーンとかは、すごく気にするようにはしています。

――次に高城さんご自身の読書についてお聞きします。普段は本とどのように付き合っているか、読書スタイルについてお聞かせください。


高城幸司氏: 活字が好きなんですね。だけど、活字が何かを生み出したかというよりも、字を読んでいること自体が好きだったので、なんとなく、何でもいいので活字を読むタイプでした。極端に言えばブリタニカの百科事典でもいいし、日経新聞でもいいし、雑誌でもチラシでもいいんです。だけど、じゃ長編のものを読めるかというと、眠くなっちゃうタイプだったので、子供のころは星新一さんとか、筒井康隆さんとか、ああいうタイプのショートショートをずっと読んでいたんです。いまは、本当に読みたくて読んでいる本は、1年間で見れば、月2冊か3冊だから、50冊読まないと思いますよ。

著書一覧『 高城幸司

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