小笹芳央

Profile

1961年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、86年に株式会社リクルートに入社。2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立、同社の代表取締役社長に就任。同社は設立8年で東証一部に上場。モチベーションを切り口に、企業向けコンサルティングなどのBtoB事業に加え、PCスクールや学習塾、プロスポーツチーム経営やレストラン経営など、BtoC事業も展開するグループの代表として経営に携わる一方、講演・寄稿多数。近著に、『1日3分で人生が変わる セルフ・モチベーション』(PHPビジネス新書)がある。

Book Information

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電子書籍よりも、ふらっと書店へ行くタイプ


――読者が、小笹さんの本を電子化したいと思い、断裁、スキャンすることについてはどのように思われますか?


小笹芳央氏: 何のこだわりもないですけどね(笑)。どっちかというと、僕は自分の考えているコンテンツ、あるいは人さまの少しでも役に立てるような考え方が、手段はどうであれ、多くの方に届けられることが一番大事なところだと思いますけれど。

――それでは読書ということも含めて、電子書籍についてもお伺いしようと思います。いわゆる電子書籍というのは、小笹さんご自身ご利用になったことはございますか?


小笹芳央氏: 僕はないです。書店に行くタイプですね。八重洲辺りに行くことがあったら、結構ゆっくり書店に立ち寄ります(笑)。休日ですけどね。自分が行くときは何かふらっと行くんですよね。ふらっと行って「何かないかなあ」って見ていますね。出張に行ったら、新幹線に乗るまでに15分、20分空いたら、必ず書店に行きます。それでたまたまいい本との出会いがあったりするんですよね。

――電子書籍よりは紙を読まれるんですね。


小笹芳央氏: 今はそうですね。電子書籍の便利な使い方にまだリテラシーがないんでしょうね。
やっぱり僕は電子より紙がいいし、直接聞いたりするのも好きですね。お経みたいに何回も聞いていると入ってくるのもある。

――先ほど「本を食べる」とおっしゃっていましたが、そうなると行間の書き込みもされますか?


小笹芳央氏: アンダーラインを引いたりすることがありますけれど、それは不思議なもので2回目3回目読んだ時に「あれ、何でこんなところに引いたんだろ」と思うことがある。結局それは本が変わっているのではなくて、自分が変わっているんですよね。たぶん、1回読んだ本を3年後にまた読んだら、線を引く場所は変わるんですよね。自分が変化、成長している証だと思います。

――昔読んだ本で今でもページを開く本というのはありますか?


小笹芳央氏: どうしても経営的な、技術的なところになっちゃいますね。事業に関係する技術的な関連本ですね。読み返すこともあるし、課題図書にして育成のためにテストをやったりするので、テストを作るためにもう一回自分が見なくてはいけないというのもあります。社内の課題図書にしているのは15冊~20冊ぐらいですね。

売り上げは、メッセージを発信したあとの共感の総量である


――いわゆる会社経営もそうだと思うのですが、すべて先立つものは「理念」ですか?


小笹芳央氏: 理念です。あるいは伝えたいメッセージですね。僕は事業というのは社会とのコミュニケ―ションだと考えています。そのコミュニケーションを発信する発信基地として会社という器があり、伝えたいことを伝えるためのメディアとして商品やサービスがある。うちの会社は売上が200億弱あります。売り上げというのは僕らが発信したメッセージに対して「あなたの言うとおりだ」という共感の総量なんだという考え方を持っています。だから、たくさんの共感を作ることができれば、われわれの事業も広がると思っています。

――リンクアンドモチベーションは、今は13年目になりますね。


小笹芳央氏: そうです。7人でスタートして、今は1200人強になりました。この12年間の歩みを考えると「何だか走ってきたなあ」という感じがありますけれども、走れたのはやはり、31歳から35歳までの知的格闘をした、あの時、自分の中に入れた考え方やものの見方が血肉化してきたから。当時のインプットが今でもアウトプットを支えているんですね。人生はどこかのタイミングで集中的に格闘して、脳みその構造も変わるんですよね。それはやったほうがいいんだろうなと思います。そうしないとたぶんエンジンが変わらないんですよね。あのままやっていても、僕はそこそこ頑張り屋さんのリクルートの部長で終わっていたかもしれない。僕は語学が堪能ではありませんが、語学で最初はわからなくても、1年2年学んでいるうちに突然パーッとわかるようになるのと同じような感覚が、自分の能力よりも少し難しい本を読むときにもあると思うんです。「何が書いてあるか、わからない、意味がわからん」というところから逃げずに格闘していると、ある時急にパーッとつながってくるというか。

――「課題図書」というユニークな制度だとおもいますけれども、そういったものを通して小笹さんの理念だとか考えというのが社員に伝わるような形ですか?


小笹芳央氏: そうですね。伝わりやすくなると思います。バックボーンが違いすぎると難しいし、僕達が普段使っている、「アイカンパニー」など、意味凝集性の高い言葉もみんなが本を読んでくれればわかる。これからは個人が主体的になるべきというところも含めて、課題図書を共有していると、背景も全部共有できますからね。

ビジネスにおいて、ジグソーパズルのピースを埋めていきたい


――最後に、これからのお取り組みといいますか、13年目今後の取り組み、展望というのは何かございますか?




小笹芳央氏: 先ほど言いましたように、まず企業向けのビジネス部門と個人向けのコンシューマー部門があります。ビジネス部門についても、まだまだワンストップで企業経営に有効なモチベーションカンパニーになるための武器がそろっていないというか、ジグソーパズルで言うとピースがまだまだ空いているんですね。そこをまず埋めていくために事業を拡張していくのと、コンシューマー部門のほうも、パソコン教室を持っていたり学習塾をやり始めたり資格もやり始めましたが、語学スクールを持っているわけでもなく、あるいは留学とか転職支援みたいなところもまだまだやれていない。となると、コンシューマー部門のほうもまず武器をそろえるために拡充していきます。大事なのはこの「ビジネス部門」と「コンシューマー部門」のリンケージです。個人の「アイカンパニー」作りを支援しつつ、場合によっては「こういうキャリアを積みたいんだったら」ということで企業に人材を紹介していくとか。5年10年の間の中で、こういうリンケージができて初めて掛け算でバリューが高まると思うんです。今はまだビジネス部門とコンシューマー部門は足し算なんですけれども、それぞれまだまだ未整備なので拡張、拡大していくというステージです。その後はこれらをつなげていって、誰もやっていないバリューの生み出し方ができるかなと思っています。

――足し算から掛け算になるのですね。


小笹芳央氏: そうなったら面白いと思います。新しい書籍の執筆も、年に1冊ずつぐらい、ゆっくりやります(笑)。

(聞き手:沖中幸太郎)

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