10年前から始まっている学術論文の「検索システム」
――青山学院では、経済学を教えていらっしゃるのですか?
松本茂氏: 大学では、基本的に主に担当しているのは環境経済学という授業と、それから農業経済学という授業を担当しています。毎年12名ぐらいのゼミ生を2学年とって24人ぐらいのゼミ生に、卒業論文の指導をしています。あとはほかの先生方と一緒ですが、学会等に行って、論文を書いたり報告をしたりという形ですね。普通の大学の先生です。
――お仕事はいつも研究室でなさっているんですか?
松本茂氏: 講義がある日、それから研究会がある日、教授会がある日は、大学に来て研究室で仕事をしています。あとは非常勤で教えに行っている別な大学もありまして、そこに行く日はそちらで仕事をして、あとはうちで仕事をする日もけっこうありますね。
――その場合は、パソコンは使われていますか?
松本茂氏: パソコンはいつもノートブックを持っていて、出張にも持って行きます。時々、インターネットで論文なんかを見ることもありますが、気になるものはPDFなどでそのまま保存しておいて、いざ読む段階になるとプリントアウトして、線を引っ張ったりする。デジタル化してずっととっておくっていうのは多いですね。
――先生ご自身でスキャンされることも多いですか?
松本茂氏: 直接スキャンをしてしまうこともありますし、学生さんたちが到底買えない高価で分厚い専門書などだと、コピーをしてからスキャンをして保存したりすることはあります。その資料をフォルダに入れてネットに上げておくと、学生さんもそこから見ることができるので、そういう使い方もします。学生が自分で専門書籍の投稿論文を探すのは、すごく大変なんですね。だからデータベースみたいなものを作って、例えば「この分野の本であればこれを見よ」というのをとっておけば、毎年使えるし、共有がしやすいのでそういう意味では便利かなと思います。
――だいぶ電子化が進んでいらっしゃるんですね。
松本茂氏: 理系の先生は、電子化がもっと早かったと思いますよ。文系の先生はいろいろ分野によって違うと思いますが、理系の先生は基本的に、専門的な資料として読むのが雑誌ばっかりで、しかも半年ぐらいの単位でトレンドが動いているから、どうしても紙じゃなくてPDFになっている論文を回すという形になっていると思いますね。それは、大学が予算をとって、そういった学術論文の検索ができるシステムに登録しているのです。僕の分野は、そういった経済力では理系には及ばないですけど、文系の先生の中では比較的理系に近いので、情報面では割とスピードが要求されることもあります。そういう意味からもどうしても電子媒体を使うことが多いですね。
――先生が今のようなスタイルをとったのはいつからですか?
松本茂氏: 資料を電子的な形で学生に渡したりというのは、2003年ぐらいからやっていますから、10年前ぐらいから大体今と同じようにやっていますね。スキャナーの性能も上がってきましたね。
読書量は減っても、検索能力向上により昔と同じくらいの学習効果
――昔と比べて学生は変わりましたか?
松本茂氏: 本質的には変わっていないと思います。僕は青山学院に来る前に、関西大学にいたんです。青山学院と関西大学とでは、学生の雰囲気は変わると思いますけど、基本的にはあまり変わっていないと思います。優秀な学生さんは優秀だし、勉強しない子はしない。僕らが学生の時から変わってないですね。
――読書量に関してはどうですか?
松本茂氏: 僕も学生時代すごい読書をしていたわけではないですけども、今の学生さんは、情報なんかはとりあえずネットで探して、そこで見つからないとあきらめちゃうんですよね。うちの学生さんぐらいだと、それなりに調べては来るんですけれど、検索とかデータベースとか前よりよくなっているから、昔の学生さんに比べると、本や情報にアクセスしやすくなっているのに、あんまり読まなくなっているとは思う。差し引きゼロというか、本質的には大して変わっていないんじゃないんですかね。
――読書量は減っているけど、違うところから取り入れているということですか?
松本茂氏: 読書量自体は、昔はなんでもかんでも読んでいたと思うんですけども、今はもうちょっとピンポイントで読んでくれるようになったというか。なんでも読むほうが本当はいいのかもしれないですけど。学習効果を掛け算で考えると、検索が楽になって読書量が減っているということは、あんまり変わってないのかもしれないですね。情報を探すのは前よりだいぶ楽になっていますね。
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