清涼院流水

Profile

1974年、兵庫県生まれ。京都大学在学中の1996年、『コズミック』で第2回メフィスト賞を受賞し作家デビュー。型破りな設定やストーリーが話題を呼び、読者のみならずミステリー作家の間でも大論争を巻き起こした。その後も旺盛な執筆活動を続け、70冊に及ぶ著作がある。2009年、カナダ人マンガ家カイ・チェンバレンとの合同公式サイト「bbbcircle」を開始。また、2012年末には、日本人の小説家やビジネス書著者の作品を全世界に発信するサイト「The BBB」をスタートさせた。近年は英語指導の領域にも活動を広げている。TOEICスコア: 985。
The BBB】 【bbbcircle

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日本人のポテンシャルを信じている


――「3000万分の1」として踏み出すのが大きな一歩なのですね。


清涼院流水氏: よく、海外に出るプロ野球選手とかサッカー選手を念頭に置くんですけども、彼らもやっぱり日本でやるべきことをやった後には、世界で試したいと思うのは当然じゃないですか。小説家はそういうことは絶対できないという思い込みが根強くあるんですね。最初は常識にとらわれない性質の奴が飛び込んで行かないと何にも変わらない。それがメジャーリーグで言うと野茂英雄選手だし、サッカーで言うと三浦カズ選手です。最初は無理じゃないかと皆が思ったけれど、彼らは意外に通用したんですよね。それでイチロー選手とか本田選手、香川選手が当たり前に通用して、事件でも何でもなくなった。僕は、イチロー選手みたいな成功はできない可能性も高いけど、なにも道がなかったところにゼロから道を作れたら、それは後に成功する人以上に価値があるんじゃないかと思っていて、僕にしかできない貢献じゃないかなと思っています。僕らが英語圏にとっての黒船になりたいんです。「何かアジアから面白そうな奴らが乗り込んで来たぞ」くらいに思われたいですよね。

――世界からの反響はやはり日本で評価されるのとは違った感覚がありますか?


清涼院流水氏: 旧bbbをやっていた時に、英語で発表する快感に目覚めてしまって、後戻りできなくなったんですよ。4コマ漫画のストーリーを僕が全部書いていたんですが、日本語で書いて日本人にすごいと言われるより、英語で書いて、地球の反対側にいる小さな国の人にすごいと言われた方がめちゃくちゃ感動するんです。それに気付いちゃったから、日本国内で日本語で発表するだけだと、もう満足が得られないんです。もちろん日本での活動も続けていくんですけど、やっぱりワクワクするのは英語ですね。メジャーリーガーとかヨーロッパのクラブチームで活躍してるサッカー選手とかも、ワクワクする本場で快感を味わってしまったら日本には戻れないと思うんですよ。本当に引退間際しか、体力が衰えた時しか戻る気がしないと思うんです。漫画を連載して世界にウケて、これを小説でできたらすごいなと思うのがいまの出発点で、2009年から構想3年くらいでようやくスタートできたところです。

――日本のコンテンツというと漫画とアニメというイメージが先行していますね。


清涼院流水氏: そうなんですよ。それも大きなモチベーションとしてあります。僕の原作の漫画も十数カ国で翻訳されたりしてるんですけど、確かに漫画とかアニメ、あるいはゲームはすごいんです。日本の出版界は小説がアジアで訳されてグローバル化とか言ってるんですけど大間違いで、アジアで訳されるのは、日本の出版界が辛うじて上位に立ってるからアジアの人が擦り寄って来て訳してくれてるだけなんですよ。ところが日本は英語圏の出版界と比べると全然下位に立っていて、作家も編集者も出版社も日本から乗り込んでいって成功した人なんて誰もいないんです。



村上春樹さんとか、よしもとばななさんの様な数少ない例外がありますが、彼らは日本の仕組みで成功したわけではないので全然サンプルにならないわけですよ。僕は日本の小説とかビジネス書が大好きだし、日本人のポテンシャルを信じてるんです。日本人は本当に素晴らしいと3.11の後も思いましたし、自分が日本人であることを誇りに思いもしたんですけど、その一方でやっぱり日本人は優し過ぎるから国際的競争社会で戦えていない。その1つの原因には低過ぎる英語力があるんで、日本人の英語力を僕が強化したいと思っているんです。日本人の英語力の底上げをしつつ、なおかつ自分でもコンテンツをどんどん出していって、日本人もやればできるというのを日本人に伝えたい。それが僕の人生を掛けた夢ですね。

電子書籍を否定することに意味はない


――BBBはインターネット、電子メディアの利点を最大限に活用されていますが、電子書籍の可能性についてお聞かせください。


清涼院流水氏: 僕は、電子書籍に全く抵抗がないんです。多分日本人の作家で1番抵抗がないのは僕だと思います。とある作家さんの集まりで電子書籍の話になって、電子書籍に抵抗がない人と問いかけられた時、僕だけが手を挙げたんですよ。それには理由があって、本当に本とか出版界を愛していたら電子書籍を絶対に認めないといけないんです。なぜかと言うと、皆が本好きで紙の本にこだわるから本の粗製乱造が進んで、それは資源を圧迫してるわけですよ。これはなにも壮大な話じゃなくて、現実的なベースの話として。だから僕は自分の作品は紙の本を今後どんどん減らしてもいいと確信犯的にそう思っています。やっぱり電子書籍の良いところは絶版がないところと、在庫リスクがないところなんです。紙の本はまず在庫リスクがシャレにならないから、売れなかったらすぐ裁断に掛けて絶版になったりもするわけです。

――出版社の方々からそういった深刻な話を直接聞かれることがありますか?


清涼院流水氏: 僕は、出版界のいろんな立場の友人知人がいるので、普通の作家が知らない業界の舞台裏の話も色々知ってます。信じられないようなひどい話も、たくさんあります。訴えを起こしてる様な作家さんたちは、そうした実情を知らないんですね。普通の作家に本当のことを言ったら、激高して何をされるか分からない、それこそ裁判ざたになると思います。既得権益層が抵抗するのはわかるんですけど、それは絶対に間違っています。世の中は変わり続けるので、新しいものを受け入れていかないといけないんですね。

ブックオフが台頭した時も出版界で大問題になりましたよね。僕も正直とまどいはありましたけど、自分が学生なら、ブックオフで100円で1500円の新刊を買えたら絶対に買うはずなんです。それを否定するのはおかしいと思ったんですよ。ブックオフで読んでくれたらそれはそれでいいとして、作家としては、新刊でも買いたいと思うものを作らないといけないんじゃないかと思ったんです。仕組みができちゃってるんですから、それを否定してもしょうがないし、つぶそうとして戦うのは愚かで、電子書籍に関しても全く同じことを思ってますね。既得権益層が必死で電子書籍を否定してますけど、そんなことやっても何にも意味がないんです。むしろいかに共存していくか、使い分けていくかが大事だと思うんですね。

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この著者のタグ: 『英語』 『チャレンジ』 『海外』 『哲学』 『考え方』 『可能性』 『常識』 『古本屋』 『大説家』 『TOEIC』

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