浅野健一

Profile

1948年、香川県高松市生まれ。72年、慶応義塾大学経済学部卒業、共同通信社入社。編集局社会部社会部記者、ジャカルタ支局長、外信部デスクなど歴任。94年から同志社大学社会学部メディア学科・大学院社会学研究科メディア学専攻博士課程の教授。2002~03年、英ウエストミンスター大学客員研究員。人権と報道・連絡会(連絡先:〒168-8691 東京杉並南郵便局私書箱23号)の世話人。『抗う勇気』(ノーム・チョムスキーとの対談、現代人文社、2003年)『メディア「凶乱」』(社会評論社、2007年)『裁判員と「犯罪報道の犯罪」』(昭和堂、2009年)『記者クラブ解体新書』(現代人文社、2011年)など著書多数。
浅野ゼミHP http://www1.doshisha.ac.jp/~kasano/index.html

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日本報道評議会の設立をこの目で見たい


――教育とジャーナリズムという2つの現場で、まだまだご活躍が続きますね。


浅野健一氏: 両方とも腐りきってますからね。この2つがだめだから、日本はだめなんです。特に大学の疲弊がすごいね。マスコミはまだ間違えると一応批判されるじゃないですか。大学は全くないですからね。大学院出て28歳くらいですぐ専任講師、准教授。社会を全く知らない。しかも知ってると思ってるから怖いんです。暴力団の人って「俺は暴力団だ」っていばってるやついないでしょ?自分がやってることは裏の仕事で、間違ってるって分かってるからね。覚せい剤や麻薬をほしがる人がいるから、ある程度社会の中で必要な人がいるので、それを売ってもいい、「社会的貢献をしている」っていう人はいないでしょ。
大学は、やってることはひどいのに、ちゃんと批判する人がいない。だから、僕は大学批判にも力を入れていきます。これは学生批判でもあります。僕は、大学っていうのは1年生の時に半分やめさせろと思う。東京理科大は4年で卒業する学生はほとんどいないくらい厳しいんですよ。上智大学とかICUも卒業した人に学問をしていない人はほとんどいないですよね。英語もできます。僕は今ある種、後継者を育てることにシフトしていて、自分がやってきたことをつなげる若手の大学の研究者とジャーナリストを育てたいという風に思っています。

――日本のジャーナリズムのあり方を変えるために、今後ご自身で、あるいは後継者の方と取り組んでいきたい課題があれば教えてください。


浅野健一氏: 記者クラブを解体して自由な取材ができるようにすることと、日本に報道評議会を作るのが今後の僕の課題です。僕が共同にいた時代に、日本に外国にあるような報道評議会や、メディア界全体の倫理綱領を作ろうと思ってがんばったんだけど、できませんでした。もう1回仕切り直して、自分の目で日本報道評議会の設立を見たいですね。テレビ界のBPOは僕は評価してるんです。あれを作ったのは大きいです。いろいろ文句を言う人はいるし、完ぺきではないんだけども。広告関係もJAROがありますよね。そうすると活字メディアだけないわけです。今はマスコミ各社がばらばらになって、しかも一般市民もネットで発信できますので、メディア責任制度が絶対に必要だと思っています。出版社、それからインターネットも含めて、知る権利と個人や団体の名誉やプライバシーをどうやって両立させるかを話し合う必要があります。スウェーデンの倫理綱領では、市民の信頼を得るために私たちは評議会の制度を作ると書いてあります。権力を監視し、市民の知る権利に応える。それに対して一生懸命働くという態度を保証するということが書いてあります。だから、がんじがらめの規則じゃないわけです。日本には健全なジャーナリズムの制度がなくて、記者クラブだけがあるっていうのが致命的な欠陥だと思います。新聞労連が1997年に「新聞が消えた日2010年へのカウントダウン」(現代人文社)という本を出しました。週刊金曜日の社長になってる北村肇さんらが中心になって書いたんですけど、2009年に重い腰を上げて新聞協会が報道評議会を作ったが、その時もう最後の新聞は消えていたという終わり方なんです(笑)。労連が予測した10年からもう3年たっちゃったんですよ。新聞、雑誌、単行本が消える日っていうのは、このままほっておくと来ますよ。本屋さんに今いっぱい積んでいる本は別になくてもどうでも良いんですけど、絶対なくてはいけない良書がたくさんありますよね。新聞と政府、どっちかひとつを選ぶんだったら新聞を選ぶっていうのが、民主主義です。ジャーナリストが変わらなければ、活字文化は消えるんです。

(聞き手:沖中幸太郎)

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