電子書籍は、ビジネスモデルがまだ確立していない
――読者の皆さんは紙の本でも読みますし、その後電子書籍化して読むなどさまざまだと思うのですけれども、電子書籍というものに対して、どのようなお考えをお持ちでしょうか?
石崎秀穂氏: 僕はどちらかというと商売人なので、電子書籍はそちらの視点から見ています。
僕は文章を書いてお金をもらっていますが、収入を得る手段としては、ホームページを作ってそこに文章を入れて、アフィリエイト広告を載せて広告収入を得る方法もあれば、ホームページのコンテンツをCD-ROMにして売る方法もある。ブログであれば、アフィリエイト広告を載せて広告収入を得ることもできれば、有料ブログにすることもできる。メルマガ運営なら、ヘッダー広告でお金をもらえることもありますし、メルマガでアフィリエイトする方法もありますし、有料メルマガにすることもできる。他にも、本を出版して印税や原稿料をもらう方法もあれば、雑誌の記事を書いてお金をもらう方法もある。さらにはアプリの文章を書くなどいろいろとあるんです。その中で電子書籍というものは、たぶん1ジャンルとして将来できるのかなと思います。
――ビジネスとしての可能性がありますね。
石崎秀穂氏: 可能性は大いにあると思います。ただそれは将来の話で、現状を見てどうかというと、正直言って僕は書きたくない。なぜかというと、ホームページやメルマガは、ネット集客の手法が確立されているし、本の出版というのは、書店と出版社がいて、本を出せば書店にばらまかれて販売されるという販路が出来上がっている。では電子書籍はどうかというと、今のところ電子書籍はまだ販売手法も確立されていなければ、販路もないんですよね。ホームページでその販路を作って売ればいいんじゃないかと思うかもしれないですけれど、例えば電子書籍で200ページ書いたとして、その200ページをホームページにしてアフィリエイトにした方が収入が得られるんです。それが全然桁が違って、たぶん広告の方が電子書籍の100倍ぐらい儲かるので、そうすると電子書籍を書く価値がないのかなと思いますね。それに、読者にとっても、電子書籍だと有料ですが、ホームページだと無料で読めるわけですし。だから今、文章を書くのを生業としているものにとって、電子書籍というのは魅力がないのだと思います。もっとも、ごく一握りの有名な漫画家や作家などは違うのでしょうけど。
――それではどのようにしたらよいのでしょう。
石崎秀穂氏: 販路ができればコンテンツを書きたいですね。出版社が販路を作ってくれて売れる状況を作ってくれればいいのですが。他にも、情報商材のように、ぼったくり価格で販売するのもひとつの方法だと思います。販売数が少なくても収入は多くなりますから。でも、僕は、それはしたくありません。それ以外にも、過去の本を電子書籍にするという方法もありますが、その方法だと現状は、違法行為が気になります。単なる受け渡しだけではなくて、ネットを通して交換しようとか、そういった話もあるということを聞いたのでなかなか難しいかなと。そこをクリアできれば、電子書籍の販売も面白いと思います。
ただ、電子書籍は、作り手としてはちょっとさみしい。僕も執筆するまでは知らなかったのですが、本というのは著者が作っていると思っていた。でも実際は編集者というリーダーがいて、書き手がいて、デザイナーがいて、イラストレーターがいてと、みんなで作っている。編集者によったら紙質がどうとか、発色までこだわって、それで1個の商品として出来上がっているけれど、電子書籍にするとそういうものがなくなってしまいます。電子書籍を例えるならば、一生懸命、みんなでショートケーキを作ったのに、読者が「自分はイチゴが欲しいから」とイチゴだけを食べて、他を捨ててしまうみたいな感じです。そうかと言って、じゃあ僕が読者だけの立場だったら、利便性を考えて、本を電子書籍にしちゃうと思います。将来は電子書籍の方に向いているのは確かですけれど、今、過渡期なんでしょう。
ウェブサイトと電子書籍はどこが違うのか
――その過渡期の中で、石崎さんの英語の教材など、電子書籍ならではの何かできそうなことがありますか?
石崎秀穂氏: それはウェブサイトと電子書籍は何が違うのという話になる。わざわざ電子書籍にしなくても、ウェブサイトにすればいいのではないかという話です。だから電子書籍の存在意義がまず問われる。少し前までは、出版社とか別の会社が絡んで、電子書籍にはウェブサイトにはない「質」があるということで、その「質」で売っていけば、電子書籍の存在意義がでてくると思っていました。しかし、最近、グーグルがウェブサイトにも著作者情報を掲載して、ウェブサイトの信用性を向上させようとしているみたいなので、単純に質だけでは勝負できないかなとも思い始めています。あとは電子書籍の著者を選ぶとか、誰でも書けない状況にするとかするくらいしかウェブサイトとの差別化が難しいのかなと思います。
――「質」というお話が出ましたが、石崎さんにとっての理想の編集者を伺えますか?
石崎秀穂氏: 僕が持っていないものを、持っている編集者ですね。たとえば、僕は大雑把な性格なので細かいところまで気を配ってくれる編集者、僕の持っていない売れる情報を持っている編集者などです。他にも、書評ブロガーと仲の良い編集者もいて、その人に担当してもらうと、新刊を書評サイトなどで紹介してもらえたりするので、そういう編集者はありがたい。
あとは一生懸命営業の人に本を推してくれる人もいいですね。自分の担当する本なので皆さん頑張りますが、やはりその頑張り方のランクがある。一緒になって売ってくれる人がいいですね。
――編集者とはどのようなやりとりをされるのですか?
石崎秀穂氏: 言い回しなど、細かい文章の直しなどはしょっちゅうです。僕は基本的に口を出さないので、よっぽど変になっていない限り自由にやってもらいます。僕は内容を提供する立場で、わかりやすい文章の書き方、わかりやすい英語の教え方などは僕が担当ですが、細かい表現や日本語の使い方に関しては編集者の方がプロなので、任せた方が確実なものができますから。編集者によっては発色についても相談されることもありますし、タイトルの相談もされることもあるのですけれど、そこも任せているので好きにやってほしいですね。
著書一覧『 石崎秀穂 』