中村航

Profile

1969年、岐阜県生まれ。芝浦工業大学工学部工業経営学科卒業。2002年に『リレキショ』(河出書房新社)で第39回文藝賞を受賞しデビュー。『夏休み』『ぐるぐるまわるすべり台』(文藝春秋)は芥川賞候補にもなり、後者では第26回野間文芸新人賞を受賞した。2005年発表の『100回泣くこと』はロングセラーとなり、映画化もされた。近著に『あなたがここにいて欲しい』『あのとき始まったことのすべて』(角川文庫)、『星に願いを、月に祈りを』(小学舘文庫)など。

Book Information

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読むのは紙で読んだ方がいい


――電子書籍に関して、書き手としてのお気持ちをお伺いします。


中村航氏: 最近では特に同級生くらいの人に「電子書籍はいつごろ出るんだよ」と言われるようになりました。人それぞれの生活習慣によって、寝る前に読みたい、電気が消えた中で読みたい、あるいは通勤などもありますから、電子ブックがいいという人も増えているみたいですね。僕自身は単行本を想定して書いてますから、電子ブックは二次的なものにしかならない。せっかくページをめくるダイナミクスというかインターフェースがあるわけだから、作者としてはそれを利用したい。電子で拡大したりするのはとても便利だと思いますが、そういう意図は完全に外れます。

――インターフェースについても考えて書かれていらっしゃるんですね。


中村航氏: そうですね、特に単行本では考えます。最後のページはこれくらいの行数で終わりたいとか、ここでこう見せたいなどはあります。長編小説なら最後の方に来るとページが少なくなってくるのが読んでいて分かるから、読み手の緊張感なども変わってくると思う。そうするとページめくった時にどう感じるのかというのは、すごく大事になってきます。短編集だったら、本を読んでいて、いつどこでその短編が終わるか分からないですよね。それなのにページをめくった瞬間に終わるのは自分の中ではアウトで、そこはコントロールしたい。だって、もうすぐ終わるという緊張感って大切ですよね。単行本から文庫本になる時は、また変わってしまうので調整をできる範囲でします。あと紙は折って印刷するので、8や16の倍数が都合がよくて、16×16の256ページなどがちょうどよくて、それに合わせようとしたり(笑)。絵本を作ってから、そういうのも意識するようになった。

日本はブックデザインの技術がとても高い


―― 装丁でも何かこだわりはございますか?


中村航氏: 本にはモノとしての面白さがあるというか、本棚に並べるとインテリアみたいなものも兼ねるし、所有する喜びもあります。買うことが喜びにつながるような何かをやろうとは思って、カバーを取った中にも絵をいれてもらうなどいろいろやっています。日本の本は優秀みたいで、以前、海外版で同じ装丁で出したのだけど、同じような色は全然出てなかった。
個人にとって小説の正体とは何なのかといえば、それはやはりモノではなく、心の中に残った感動とか、印象とか、ロジックではないでしょうか。ただそれを伝えたり残したりする手段として僕らは、文字を使う。それだけではなく、レイアウトや表紙のブックデザインでも伝えようとするし、帯などもある。やれることは何でもやりますから、きっと紙の本というのは、完成されたモノなんだと思いますよ。
以前、ある作家さんのインタビューを読んでいたら「小説が電子化される前に死んでしまいたい」と書いてあって、なんか分かるなあと思った。あれですよ、小説よりも電子化に向いているものがあるはずで、例えばビジネス書、法律書などは超絶便利だと思います。



これから電子書籍は、本の読まれ方として一般化していくとは思います。感性を一対一でやりとりするようなことと、情報を入手するというのはまた違うと思います。あ、でも僕は編集の方の家が本であふれていることはよく知っているから、それらを読み取ってデータとして残しておくというのはすごい理にかなった行為だと思いますよ。

著書一覧『 中村航

この著者のタグ: 『装丁』 『書き方』 『小説』 『作品』 『感覚』 『ブックデザイン』

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