電子書籍は本棚を持てない、本から離れてしまった世代を呼び戻すカギに
久世番子さんは愛知県出身の漫画家で、『NO GIRL,NO LIFE!』にて2000年にデビュー、書店でのアルバイト経験をもとにしたエッセイコミック『暴れん坊本屋さん』ショートエッセイコミック『私の血はインクでできているのよ』などで独自の作風を現しています。漫画家としてご活躍中の久世さんに、漫画について、本とのかかわりについてインタビューしました。
新刊はバリバリの少女漫画『パレス・メイヂ』
――2000年のデビュー以来、漫画家としてご活躍中ですが、近況をお伺いできますか?
久世番子氏: 6月20日に白泉社の「花とゆめcomics」から『パレス・メイヂ』という新刊が出ました。最近はコミックエッセイばかり書いていましたが、久しぶりの少女漫画です。コミックエッセイだと毛が一本で済むのですが、少女漫画は髪の毛が多いので、描くのが大変です(笑)。
――普段はどのような執筆スタイルなのでしょうか?
久世番子氏: 私は1人で描いているので、けっこう孤独です。住んでいる1Kが仕事場であり生活の場でもある。ベッドと作業机があって、本棚が置いてあるだけです。
――創作の着想はどこから得られていますか?
久世番子氏: 『とげぬきハトちゃん』に関しては普段の生活に対する怒りからです。それ以外のものですと、本屋さんのエッセイに関しては書店勤めの経験からでしたが、辞めてもう5年たつので、それ以外には経験が何もありません。描く時は取材をしたり、人の話を聞いたりしています。
もちネタの数は絶対に数えない
――執筆している中で、スランプになることはありますか?
久世番子氏: 行き詰まると一番危険なので、先のことは考えないようにして生きています。「まだこれだけネタがある」と自分のもちネタを数えだすと、私は精神的に不安定になりそうなので、考えないようにしています(笑)。「ネタはないものだ」と思って生きていこう、ないものだから、来た球を打つというやり方です。残り玉を考えず、後玉という考えも捨てる。自分は濾過装置フィルターのような感じで、通り過ぎたモノをつかんでいくしかないと思っています。フリーランスの仕事は安定しないから、不安になりやすいのですが、不安になってもいいことなんて何もない。だから、精神の安定を保っていくことを最優先の課題にしようと思っています。
――気分転換にはどのようなことをされていますか?
久世番子氏: 私は77年生まれで、消費に対して喜びを感じない世代だからなのか、
消費は食べ物や着るもの読むもの、趣味は散歩ぐらいです。
芥川賞作家の中村文則は、幼稚園から高校時代までの同級生
――芥川賞作家の中村文則さんと同級生だったとお聞きしました。
久世番子氏: 学生時代は全然しゃべらなかったんです。大人になって、私が書店に勤めているころに、彼が新潮新人賞、それから野間文芸新人賞をとった時に「この人、地元の人みたいだよ」と書店の店長さんが言っていたのですが、彼はペンネームを使っていたのでわかりませんでした。その後、芥川賞をとった時に、同級生ネットワークで話が広がって、「ああ、あの人だ」とわかった。それで同級生何人かで会うことになって、ようやく何年かぶりに再会しました(笑)。今、彼も近くに住んでいるので、新刊が出た時には会ったりします。彼とは幼稚園のころから一緒だったと思いますが、これまではあまり接点がなかったということなのでしょうか(笑)。
著書一覧『 久世番子 』