田村秀

Profile

1962年生まれ、北海道出身。 1986年東京大学工学部卒業、学術博士。 東京大学大学院客員助教授、自治大学校教授等を経て、2013年より新潟大学法学部長を務める。 行政学・地方自治・公共政策・食によるまちづくりなどを専門とし、B-1グランプリの特別審査員や著書『B級グルメが地方を救う』(集英社)など、食による地域振興も行う。 近著に『新潟と全国のご当地グルメを考える』『消滅か復権か 瀬戸際の新潟県』(新潟日報事業社)、『ランキングの罠』『暴走する地方自治』(筑摩書房)、『自治体格差が国を滅ぼす』(集英社)、『データの罠 世論はこうしてつくられる』 (集英社)など。

Book Information

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現場主義。40種類以上のアルバイトを経験。


――本で世の中の様々な違いを改めて気がついたということですが、その後ご自身に変化はありましたか?


田村秀氏: 徐々に本の世界だけではだめだ、ということも分かってきました。僕自身は中学まではあまり外向きの人間ではなかったのですが、中学のある時期に「何かをしなくては」と思いたって、新聞配達を始めました。その後も、本に書いてあることを確かめたいという思いから、高校時代も含めてアルバイトに目がいくようになりました。現場主義である沢木耕太郎の本などもけっこう読みまして、自分自身で出来る現場主義とは何かを考えた結果がアルバイトだったので、東大の時を含めて40種類位やりました。

――アルバイトではどのようなことをされましたか?


田村秀氏: 中学で新聞配達、高校の時は魚屋、スーパー、エキストラなどをやって、大学に入ってからは塾講や家庭教師、それから展示会の会場を作ったり回収したりなど。後はダクトの掃除、レストランのボーイ、ビアガーデンなど。他には引越し、検査、交通や騒音の調査、世論調査、ビラ配り、おはぎ作り、結婚式場の搬入の単発のアルバイトなど、あらゆる分野の仕事をしました。僕は力があるわけでもなく不器用でしたから、よく怒られた記憶もあります。

――まさしく現場主義というか、素晴らしい経験ですね。


田村秀氏: 本とそれから先の現実の世界を、必ず両方を見なければいけないと思いました。東大を出た、あるいはその後に役所に行ったことではなく、やはり、本と読んだ時の充実感と共に生まれる疑問などが、自分の原点なのかなと思います。大学の時にオフロードバイクに乗っていたのもあって、それで現場に行ったり、北海道を3週間位テントを乗っけて、いろいろと走ったりもしました。僕の場合は、見かけはあまりワイルドではないのでバイクに乗るように思われないのですが、28歳位まではそういうことをやっていました。

「広く深く」地域に関わって貢献していきたい


――将来については、当時はどのように考えられていましたか?


田村秀氏: 公務員試験に落ちたら1年位留年してマスコミを次に受けようかなと思っていたくらいで、絶対に公務員になろうとは思っていませんでした。ただ、地域のことにはすごく関心を持っていて、役人になりたいというよりは、県庁と市役所ということではなく、企画立案なども含めて、地域に関わる仕事をして貢献したいとは思っていました。

――現場や、根幹に関わって知りたいという一貫した意欲をお持ちなのですね。


田村秀氏: そうですね。でも街づくりやグルメにしても、根幹までいつも迫っているかどうかというのは、自分では自信はありません。でも、少し欲張りな気もしますが、広く浅くではなく、「広く深く」を目指して、各地域を回りながら写真を撮ったり話を聞いたりして本を書いています。グルメ、データリテラシー、地方自治というのが僕の中での3本柱。よく1本に絞れなどと言われますが、それは自分には出来ないから全部やろうと、開き直っています。地域、地方自治あるいは食にもいろいろなものがある。僕自身は役所に入ってからはずっと文系の仕事をしていましたが、理系スピリットは大事だと思います。法律をいじるといっても、社会の様々なデータを使って表現されるわけで、それに対するリテラシーがないといけません。香川県企画部企画調整課長をしていた時、1992年に『クイズ現代かがわの基礎知識』を出した時に思ったことは、客観的なデータで語るべきだということ、地域の人は地域のことを知らないということです。食のことも家計調査など、データでいろいろと語られる。食は地域の個性で、地域起こしとして食が使われるという風に、全部が繋がっていくんです。地方自治のことももっとデータで語るべき点もありますし、3者というのは僕の中では密接に絡まっているのです。



――3つの科学的な視点で、物事の本質や根幹などに近づくのでしょうか?


田村秀氏: 僕は真理は常に1つではないと思っています。ただ、その時に一方向だけではなく科学的にも見なくてはいけない。科学的なアプローチ、地方自治のアプローチもあれば、データのアプローチに食のアプローチもある。もっというと、食の話には正解などなく、自分が美味しいと思えばそれで良いわけなのですが、宇都宮餃子が一番、浜松餃子が一番と言う人もいるように、人は競うわけです。少し罠みたいな話のように思えますが、そういうのもまた面白い。問題点は指摘しつつも、肯定的に捉えようとは思っています。

著書一覧『 田村秀

この著者のタグ: 『大学教授』 『可能性』 『原動力』 『行政』 『アルバイト』 『経験』 『地域』

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