初めて書いた本は日本初のご当地検定本
――本を出すきっかけはどういったことでしたか?
田村秀氏: 僕が初めて単著を書いたのは、香川の人が香川のこと知らないといけないと思いから書き始めた、前述の1992年の『クイズ現代かがわの基礎知識』です。その頃、香川のイメージアップの話をしていて、田尾さんという、有名な麺通でもある当時タウン誌の編集長だった方から、うどんで行こうという話も出ていたのですかが、蕎麦屋もラーメン屋もある、という話になりすぐ潰れてしまいました。その2年後の平成5年に香川と徳島共催の国体があり、共催ということで国体を優勝しない宣言しようという案も出ましたが、それも却下されたわけです。そういうこともあり、組織の中で言ってもしょうがないから、自分で何かイメージアップを図ろうということで、クイズに決定しました。香川のイメージアップの前に皆が地元のこと知らないという問題を払拭しなくてはならなかったので、当時はまだインターネットもなかったので、香川を知ってもらうために本を出すことにしました。地元の出版社さんに協力してもらい、全部手作りしました。
――本の内容はどのようなものですか?
田村秀氏: 僕が全部図書館で香川のいろいろな出来事の記事を古い新聞から自分で探してきて、構図、メモ、答え、解説、写真、グラフも全部当時ワープロで自分で打ちました。町の数や、高校野球などのデータ系から、大御所は誰かなどという情報満載の4択問題の本です。当時はクイズ番組はたくさんありましたが、これはご当地検定が始まる前の92年、今から21年前なので、僕は勝手に日本最初のご当地検定本だと思っています。妻が、出産で実家の方に帰っていた時期も長かったりなどで、時間があったというのもあるでしょうか。写真は出版社に探してもらうなどして、政治経済もあれば、文化、風俗もあるという感じの本です。
――精力的に活動される田村さんの意欲の源はどういったものでしょうか?
田村秀氏: この時は、30歳になるまでに何か形に残したかったという思いがあったと思います。これを出版したのが29歳の時でした。自分の名前出すとつまらないと思い「かがわクイズ問題研究会」などと勝手に名前を作ったりもしました。「僕」を売ることよりも、この「本」が売れることが大事だったので、国から来た県の課長ということもあり、個人の名前よりもクイズ問題研究会の方がもっともらしいと当時思って使いました。最初1000部出したんですが、増刷になった時や、平積みになった時は嬉しかったです。
もっと一般の人に発信するべきこともあるのではないかという思い
――その後もたくさんのご著書を出されていますが、書く時の気持ちに変化はありましたか?
田村秀氏: その後は、共著は何冊かありましたが、単著はしばらくありませんでした。2003年に大学にきて初めて『市長の履歴書』という本を出しました。最初の頃は学術系の本ばかりでしたが、道州制の本を出してからいろいろ書いていくようになりました。道州制の本や政策形成などの本などを書いたんですが、なんか違うなと感じていました。
学者の世界はやはり狭く、ある意味では仲間うちだったり、学者共通の言語もあって、その中でいろいろと研究を深めていくのは良いのだけれど、もっと一般の人に発信すべきってことがあるんじゃないかと思い始めました。それで2006年に『データの罠』を書いたんですが、これが一番売れています。この本を出した時に、書評などをたくさん書いてもらえて、出して1ヶ月もしないうちに、日テレさんのディレクターから電話で「『太田総理』で世論調査についての番組をするから出てくれないか」と言われたりするようになりました。
ボツになった企画も他にもいくつもありますが、僕は基本的には自分で売り込みをします。単純にお金というよりは、いかに広まるかが大事だと思っているので、ぜひ出してもらいたい。
――地域の本に関しては香川だけではなく、新潟についての本も出されていますね。
田村秀氏: 新潟のいろいろな問題。新潟の人はいうのは、地元愛があるので新潟のことを悪く言わないんですが、地元に対してラブイズブラインドになってしまっている部分もあるということを『消滅か復権か 瀬戸際の新潟県 12の課題』を2010年に書いたのですが、地元ではけっこう評判になりました。11年の地震、その後副学部長になって忙しくなったのですが、西の方で名古屋で河村氏、大阪で橋下氏が首長になるという社会の動きがあって、周りがにわかに熱狂しているけれどどうなのか?ということを『暴走する地方自治』で書きました。
――学部長の仕事もあってお忙しい中、執筆もあるわけなのですが、どんなイメージを持ってお仕事をされていらっしゃいますか?
田村秀氏: これは京浜東北線で、こっちは山手線をといったように、別の電車を同時に走らせるってイメージです。でも、線路はやはり繋がってるし、脱線しないようにしなければいけないっていうイメージです。制御装置が僕といった感じでしょうか。だから、時々混乱することもありますが、コラボっていう感じもあります。
著書一覧『 田村秀 』