ノウハウは世の中で使ってもらうことが一番大事
――セミナーなどを行う際に心がけていることは、どういったことですか?
柴田昌治氏: 我が社がやっているセミナーには、同業者やコンサルの方、あるいは会計士さんがよくいらっしゃいます。会計士さんなどは顧問先をたくさん持っていらっしゃるからだと思いますが、我が社のビジネスとは直接つながらないような人たちが来られるのも大歓迎です。逆に、我々が他社主催の研修に行こうと思ったら、ノウハウの流出を懸念してなのか拒否されることが多いんです。僕らはどんどん使ってくださいと言います。
――顧客を囲い込もうというお気持ちはありませんか?
柴田昌治氏: 全然ありません。我々は「オフサイトミーティング」という言葉を商標登録していますが、例えばホテルがオフサイトミーティング研修パックなどをやっていても、特に使用料を取ることはありません。商標登録に関しては、自分たちの活動が制限されないように防護するという意味だけなので、世の中でどんどん使ってもらうことが一番大事。会社のメンバーにも、通常の会社に比べて、「日本を変えよう、世の中を変えよう」と思い、それを使命だと感じている人は多いと思います。でも、初めからそう思っていたのではなく、会社に入ってきてからそう思うように人もいるのではないかと思います。例えば総務や経理の人は、あまりよく分からずに入ってきていますが、今はすごくレベルが高い。
――どういうことがきっかけで変わっていったのでしょうか?
柴田昌治氏: 僕が変えさせたわけではありません。チームとして議論する中で、自分の頭で考えるチャンスもたくさんあるので、自分たちで変わっていったのです。自分の頭で考えると、問題は常にたくさん存在し、その問題を解決するために七転八倒の努力をしながら、その努力の中でみんながレベルをあげていっていることは間違いないと思います。
大切なのは現実をきちんと直視し、問題を解決していくという努力
――会社を作り上げるにあたって苦労した点はありますか?
柴田昌治氏: 今から25年以上前の初期の頃は、まだ研修会社で、当時は研修を「金もうけ」だと思っていた人もいて、言っていることとやっていることが違う人が多かったので、苦労は多かったです。「僕の生き方と違うから、別のやり方を見つけたい」と、プロセスデザインという方法を創りました。そして、今から十数年前に、当時が7、8人残っていた研修担当の人に退職金を渡して、「会長にはなるけど、株も代表権も持たないので、報告もいらない。自分たちの会社としてやってください」と独立させました。研修というのは、「こうあるべき」というきれいごとを言うことが多く、インストラクターは、あたかも自分がそうだという演技をするわけですが、実際はそれとは全く違う。部長研修やらせると上手いのに、部長は全然できない人もいて、こんな精神論では会社は変わらない、と考えたのが今の仕事を始めたきっかけです。
昭和型の企業統治というのは、頭の中で考えたあるべき像を押しつけるわけですが、現状はそんなきれい事とは違いますから、いつも現実と乖離していく。原子力の話でいうと、「原子力は安全でなければならない」と美しいことをいうわけですが、実際には原子力にはたくさんの問題点があるわけです。本当に大切なことは、「原子力にあるたくさんの問題点を解決するにはどうしたらいいんだろう」と一緒に考え悩み、解決策を導きだしていくことなのです。現実をきちんと直視し、その中で問題を解決していくという努力を怠らないことです。