池谷裕二

Profile

1970年、静岡県生まれ。 神経科学および薬理学を専門とし、海馬や大脳皮質の可塑性を研究する。 最新の脳科学の知見をわかりやすく紹介する一般向けの書籍を多く執筆しており、ほとんどの著書が中国語・韓国語・台湾語に翻訳出版されている。 その活動スタイルは新聞紙上で「ネオ理系」と評されたこともある。 著書に『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社)『脳はこんなに悩ましい』(中村うさぎとの共著。新潮社)、『進化しすぎた脳』(講談社)、『脳はなにかと言い訳する』(新潮社)など。
【公式サイト】http://gaya.jp/

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電子書籍は読書障害のサポートに役立つか?


――池谷さんは読書障害をお持ちだとおっしゃいましたが、今日は電子書籍が読書障害をどうサポートできるかというお話もさせていただきたいと思います。


池谷裕二氏: 私は本をあまり読まないから、電子書籍もそれほど読みません。オーディオブックは英語のものが多いですがたまに聞きます。電子書籍はまだ少ないけれど、理系の本は図の解説だけだと理解しにくいので、アニメーションになっているとわかりやすいと思います。電子書籍はオールカラーにできるという点もいいと思います。

――今も日本語のオーディオブックは少ないのでしょうか?


池谷裕二氏: 私は耳で聞く方がいいのでもっと欲しいです。例えば明治・大正・昭和初期の古典小説がもっとあればいいと思います。目の見えない方のコミュニティー向けに起こしているものがあるそうですが、著作権の関係でネット上には出てこないので、もったいないなと思います。私のように文字を読むのが苦手な人もいるわけで、目の見えない人だけが文字を読めないわけではない。入試の現代文の問題やセンター試験の問題文を、時間内に最後まで読めない。現代文は異常に長く感じるのですが、漢文や古文は短いから得意でした。だから文字を読むのが不得意な人向けに、夏目漱石や太宰治の古典がオーディオブックになっていたら良いと思います。電子書籍を読み上げてくれる機能は現状ではまだ不十分ですが、この機能がさらに進化すれば、本当に助かると思います。

――実はBOOKSCANも本が読めない方向けに、音声読み上げ機能を研究室の方で一緒に開発しております。


池谷裕二氏: 素晴らしいです。わかる程度に読んでくれればいいので、完璧でなくてもいい。英語には、AdobeのPDF音読など、すぐれた機能を備えたものが出始めていますね。

電子書籍の可能性は「ペーパー」だけじゃない。


――電子書籍の可能性というと、いかに本に近づけるかという風に語られがちだと思うのですが。


池谷裕二氏: どうやって本に近づけるのかを考えるのはアナログ世代です。もし本に近づけるのではれば、私は、紙であることの重要性があると思っています。電子ブックは固いですから。紙ならば折ってもいいし、必要ならさつまいもを包んでもいいし、困ったらお尻をふいてもいい(笑)。そのくらいまで紙に徹底した電子ペーパーがほしい。あとはホログラムがもっと進化するはずですので、シアターみたいなのができてもいいかなと思います。ペーパーと言うと2次元のイメージがありますが、風呂敷のようになっていて、広げたら3Dになっていると面白いです。今は無理でも、最終的にはそこまで行ってほしいと思います。

iPadは論文持ち歩きには欠かせないデバイス。


――iPadはどのように使われていますか?


池谷裕二氏: 「著書の○○ページに書いてあることは、どういうことでしょうか」と読者からメールで問い合わせがきた時に、すぐに答えられるように、自分の本は、自分でiPadに入れて常に持ち歩いています。そのために電子化しています。実は、本としては、あとは青空文庫くらいしか入れておらず、あとはエバーノートで論文を持ち歩いています。私は、朝起きたら論文をチェックするのが日課で、毎日100本は論文をチェックします。「これは重要そうだな」と思ったらコンピューターの中にフォルダに入れておくと、iPadと同期される。ここに追加されるのは1週間に2、3本ずつくらいですが、全体で多分2、3000本は入っています。自分の研究分野に関係があるような重要な論文は、いつでも引き出せるようになっています。地方の学会に行くと、夜、研究仲間と飲みながら「あの論文にデータが出ていたよね」などとディスカッションする。「3段落目のあの文章は読んだ?」「あれは仮説がすぎるよね?」など、皆で話すときに、電子化してあれば論文をその場で出せる。論文を何千本も持ち歩くのは難しいし、いつどれが必要になるかわからない。私はもう老眼が始まっているから、iPadですと、現物の論文よりも文字を自在に拡大できるのもうれしいです。

――フォントの大きさが、自由自在に変えられるのですね。


池谷裕二氏: 赤線も引くことができますね。しかし何より検索できるのが大きい。知らない単語も内蔵辞書でワンタッチ。あっという間に引けたりする便利さでは、電子書籍は紙をはるかに超えていると思います

――論文の閲覧も電子書籍として含めるとすれば、池谷さんは電子書籍を大いに駆使されていますね。


池谷裕二氏: そうですね。毎日使っています。あと余談ですが、私は小学校5年生の時からずっとクラシック音楽が好きで、楽譜を3000曲くらいiPadに入れて持ち歩いている楽譜フェチです。教科書や楽譜はスキャンスナップでスキャンしています。私は音楽をただ聴くのではなく、楽譜を見ながら聞くのが好きなのです。作曲家別に分類しながら3000曲入れておくと、新しい時代から古い時代まで、大体の名曲がカバーできます。以前は楽譜を本棚に入れていました。今は本棚がだいぶ空きました。手持ちのCDもすべて音楽データに変換したので、かなり家がスカスカになりました。

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この著者のタグ: 『大学教授』 『科学』 『研究』 『脳』 『音声』

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