1人でも多くの人に本を届ける
――ご著書はどのような想いで執筆されていますか?
山崎亮氏: みんなが知らない分野のことを始めて、まだ8年目なので、こういう分野がありますよということをまずは知ってもらおうと思っています。今はちくまプリマー新書という、高校生の読者をターゲットにしている新書の原稿を書いていますので、高校生たちが読んでワクワクするような本にしたいなと思っています。いきなりコミュニティデザインの本を読めというのは難しいかもしれないので「先に読んでおいて」と言えるような本を書こうと思っていて、今は全体の1/3くらいまで書き進めました。
――山崎さんにとって、編集者とはどのような存在でしょうか?
山崎亮氏: 最初の読者のような感じです。一般向けの本は、あんまりマニアック過ぎても困るので、本を買う最も大きな層の人たちの感覚で原稿を読んで「これぐらいの表現にしておいた方がいい」「こんな話題が入ると一般の人たちがワクワク読み進められる」ということを整理していく役割をしてくれるとうれしいです。しかも、褒めながら整理してくれると「もうちょっと書こうかな」というように気分が向上しますので、なおいいと思います。否定的な話ばかり言われると段々書くのが嫌になってきますので、上手く編集者が著者を転がしてくれて、多くの人たちに届くような内容に導いてくれたら、安心してその手の上で書けるという気がします。編集者と著者はまさにタッグを組んで本を作っている感じです。
――編集者は、専門家と一般読者の橋渡しをしてくれるのですね。
山崎亮氏: キッチリとみんなに届けて欲しいと思いますし、1冊でも多く売りたいと思います。あまり売れなくても出しておいた方がいい本もあるかもしれませんが、自己満足で書くのであれば今はブログで書けばいいわけで、出版を通そうと思うのであれば、より多くの人に買って読んでもらうように努力しなくてはいけません。だから、本を出させてもらった以上、書店の講演会や、営業活動にも行くなどして、協力して売らないといけないと思っています。
熱い若者、求む
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
山崎亮氏: コミュニティデザインをする人がまだ少ないのですが、仕事は本当に多く、3日に1つぐらい仕事の依頼が入ってきますが、もうこれ以上は受けられない状態です。85物件ぐらいうちの事務所が抱えていますが、事務所には25人しか人がいないし、人もすぐには育たない。ワークショップなどで司会進行をして、まとめられる人はまだそれほどいないので、これ以上仕事を増やすと、質が下がってしまう恐れもあります。でも現実に困っている人がいるわけなので、コミュニティデザインができる人をもっと生み出さなければと思っています。
今、東北芸術工科大学で、コミュニティデザイン学科を作る準備を進めています。文科省からも正式に認可が下りたので、受験の内容や、定員、どのような教員がどのような授業をやるかなども、7月1日から発表できるようになりました。山形にstudio-Lの事務所を作って、現場で仕事をしながら、うちのスタッフが教員になります。その仕事に学生が5、6人ぐらいずつついていくといった実地で学ぶ学科にして、卒業したら自分の故郷を元気にするようなコミュニティデザイナーとして活躍してもらおうと思っています。東北の復興のプロセスがありますから、学生に復興の時の、合意形成や主体形成の方法を学んでもらおうと思います。
――高校生に向けた本を書かれているというお話がありましたが、大学で、コミュニティデザインを学びたいという生徒がたくさん現れるといいですね。
山崎亮氏: 10月ぐらいにAO入試がありますが、コミュニティデザイン学科というものができるということが高校生に届かないと受験してもらえません。ぜひ熱い人たちに受験してもらいたいと思っていますので、なるべく高校生やその保護者たちに届くように、講演会などで話すことにしています。大学生や社会人に話をすると、「私も高校生に戻りたい」と言ってくれます。オープンキャンパスなども予定しておりますので、こういう仕事に興味がある人は、ぜひ挑戦してもらいたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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