「枠」を取り払い、「ワクワク」に従って生きる
浅見帆帆子さんは、自らを幸せに導く、直感や本音を大切にする生き方を提唱し、多くの読者の共感を得る作家。洋服やジュエリー、インテリアのデザイナーとしても活躍の場を広げています。浅見さんは、どのような直感に基づいて多彩なキャリアを形成したのでしょうか。作家デビューのきっかけとなったイギリス留学のエピソード、読書や執筆への想いなどから探りました。
すべての仕事は自分の体験から
――多方面でご活躍ですが、今手がけられているお仕事についてお聞かせください。
浅見帆帆子氏: 私は24歳の時、本当にひょんなことから本を書く道に入りまして、今はおかげさまで1年間に3、4冊本を出しています。それ以外には、数年前からジュエリーのブランドをやっていて、あと、昨年から介護ユニフォームのデザインを始めました。
――介護に携わる方々の衣服をデザインされるきっかけは、どういったことですか?
浅見帆帆子氏: 4、5年前にある介護施設の内装を担当したことがきっかけです。介護施設で働かれている方々にとって、もっとかわいくておしゃれな介護ユニフォームがあったら、モチベーションもが上がるんじゃないかと思って、いつか作りたいなと思っていたところに、その機会をいただいたということですね。おしゃれな室内着がコンセプトなので、介護用以外にも使っている方がいらっしゃるし・・・私も着ています(笑)。
――幅広い活動範囲ですが、それぞれの仕事に共通するところはありますか?
浅見帆帆子氏: 動機はすべて同じです。たとえば本については、いつも自分の生活の中で実験したことを書いているんですね。たとえば「こういうことをやったら運が良くなるって言われているけど、本当なのかしら」と思ったら、自分の生活の中で徹底的に試してみる。1つわかると「次はこういうことを試してみよう」という、それの繰り返しです。その実験結果に自分自身が驚いて、感動して書く。ですから、文体はみなさんに向けて書いていますが、自分のために書いているのでしょうね。
デザインについても、自分の体験が形になったものばかりです。つまり洋服は私が「着たい」と思うもの、ジュエリーも私が「身に着けたい」ものをデザインします。両方とも、「こういうものが欲しい」というときに見つからなかったんですよね、だから自分で作る、ということです。誰でも、興味があることや、心が反応することってありますよね。疑問を感じることもそうです。その「あれ?」を追及していくと、その人のやるべきことは見つかるし、人によってはそれを「使命」と呼ぶかもしれませんね。
――最初から計画するのではなく、その時々の体験、興味によって、すべきことを考えていくということなのですね。
浅見帆帆子氏: もちろん、事前準備や計画はしますけど、やりすぎると、それが先入観や偏見につながることもありますよね? 性格的にきっちり予定を決めるのが得意な方もいると思いますが、私はあまりがっちりと決めると、それができない時にモヤモヤするから、わりとゆるくしています。たとえば「今後の仕事の予定は?」と聞かれるとき、確かにやりたいことはあるのですが、いつまでにするか、という期限や方法はあまり決めていません。「こういうことをしたい」という強い思いや意識があると、それに関係あることは必ず引き寄せられてくるので、そのときがそれをするタイミングだと思うんです。ですから、心ははっきりと強く持ちながら、あとは流れにまかせる感覚です。
本音と直感で生きるために必要なこと
――仕事や私生活で、将来進む道に迷っている読者の方々もいらっしゃると思いますが、どのようにアドバイスされますか?
浅見帆帆子氏: 迷った時の選択の基準は、自分の本音でどう感じるか、言葉をかえると「直感」です。現代はネットの普及もあって、あらゆることにあらゆる情報があります。「良い」も「悪い」も、いくらでも両極端の意見があって、どちらも正しいかもしれない……。そういう時に何を基準に選ぶかと言ったら、「それがいいような気がする」とふと感じたものや、なんとなく心に残るものです。私は、仕事も物も同じように選んでいいと思います。自分の感覚で「あ、それはいい」「気が乗った」と思えることを選べるようになったら、ストレスはなくなりますね。楽しくないけど利益を生み出すという仕事は、その時は良くても続かないと思います。利益のためだけに仕事をし始めたら、楽しくないですよね。きれいごとに感じますが、大企業の経営者などは、みんな根底に「それをするとワクワクする、自分もみんなも喜ぶはず」という楽しさを基準に、動いている人が多いことに気付きます。心の豊かさはなく、利益だけを追求している人は限界がある、と今みんなが感じていますよね? そして苦手なものをあえて選ぶ必要もない。だって、自分が苦手なことを「好き」と思う人も必ずいるからです。それは、その得意な人におまかせすればいい。みんながまわりとの比較をやめて自分の本音で生きるようになったら、自分の好きなものを選んでも矛盾がなく成り立つような世界に必ずなっていくと思います。
――現実的には、好きな仕事だけを選んでいくのは難しいこともあるのではないでしょうか?
浅見帆帆子氏: 例えば仕事の依頼で、みんなが勧めているし、お互いの条件も合っている、でもなぜか気が動かないという時があります。人に説明できないなんとなくの感覚でも、どんな理由でも、その時に本音では「やりたくない」と思っている状態です。こういうとき、頭で考えて「やっておいた方が得」とか、「人から頼まれたから断れない」と、いうようなジャッジをしがち……。「それが理性的なビジネスマンのすることだ」と思うからですよね? 本音ではノッテいないのに、頭だけで考えて受けた仕事は、結局、後からおかしな問題が起こりやすくなります。何十回も経験して、最初に感じることはまさに直感だとわかりました。大経営者ほどそういう感覚を持ってらっしゃる。それを「直感」と言おうと「虫の知らせ」と言おうと、「自分で決めている」と言おうと何でもいいんですが、そういう自分の感覚を大切にすることだと思います。
それから、よく直感の話をしていると、「本音は決まっているけれど、その本音を通そうとすると問題が起こるのでできない」という話を聞きます。本音で生きるというとき、そこに人が関わっていれば、その本音をきちんと伝える努力は当然必要です。それを飛ばして、感覚の赴くままに生きればうまく行くというわけではありません。日本人は、伝える努力をあまりしないので、どの世代でも、コミュニケーションが足りないような気がします。私も反省することがありますが、相手に伝わったと勝手に思い込んでしまってるんですよね。相手がわかる表現やニュアンスで伝えなければ、伝えていないのと同じ……感覚も含めて説明しなくては、相手も信頼してくれません。