本とは、必然的な出会いがある
――浅見さんは、電子書籍についてはどのようにお考えでしょうか?
浅見帆帆子氏: どんなものにも良い点と悪い点があるものですよね。私は本自体の紙質とかにおいが好きなんです(笑)。だから、私自身の本が電子書籍版になるというのはあんまりイメージできない……でも、ハウツー物や情報本などは電子書籍で読むこともあります。さっと速読ができるような種類の本は電子書籍の方が便利ですよね。小説は紙で読みたいですが。電子書籍で私が不便だなと思うのは、書き込みができないことです。線を引いたり、ちょっと角を折ったり「前はここに感動したんだな」というものを残しておくことができない。
たしかに、本がどんどんたまっていくのは大変な部分もありますけど。自分の好きな物だからこそたまっていくわけですからね~。iPad一つに収納できれば、旅行の時とかには便利ですけれど、本屋さんに行ったときの「あ、この表紙いいな」とか、手に取ったときの手触り感とか、そういうようなものも合わせて楽しみたいんですよね。
――書店にはよく行かれますか?
浅見帆帆子氏: はい。店の中をサーッと歩いて、目に付いたものを手に取りますね。今の自分に必要なものに目が留まるだろうと思うので、ベストセラーだからとか、そういう基準で読むことはほとんどありません。もちろんベストセラーでも読みたいと思えば読むけど(笑)今売れているから、という理由でなにかを選ぶことはほとんどないですね。
――おすすめの本があれば、教えていただけますか?
浅見帆帆子氏: いろいろあるんですけど、1冊だけ言うと、『アミ 小さな宇宙人』です。スペインの男の子が自分の家の近くで「アミ」という宇宙人に会って、宇宙船に乗って旅をする話。実際にそれを体験した男の子はまだ小さかったので、親せきが代筆したそうですね。私は、この本は、どう考えてもファンタジーとは思えない……本当に起こったことだと信じて読んでいます。もしあれがファンタジーだったら、もっと面白く書けると思うんですよね(笑)。でも、途中に中だるみもあるし、会話的に「この場面必要ある?」っていう部分もあって、本当に体験した人がそれを書いている、という感じなんです。この本の何に衝撃を受けたかというと、3部冊を通して「本当の愛とは何か」が書いてあることです。仕事をする時の愛の基準、人間関係がごちゃごちゃになった時の愛の基準、お金がない時の愛の基準、利害が絡むときの愛の基準……すべてにおいて「愛の基準に基づく世界はこういう暮らし」ということが本当にわかってくるんです。すごくいい本です。
――『アミ 小さな宇宙人』を最初に読まれたきっかけはどういったことでしたか?
浅見帆帆子氏: 最初はその中の1冊を、読者の方がお手紙と一緒に送ってくださったんです。でも、その時は忙しくて脇に置いていました。本棚の上にほかの本と一緒に置いておいた。それがある時、掃除をしながら、旅行先にどの本を持って行こうかなと考えていたら、その本が上から降ってきて「カツン」って頭に当たったんです(笑)。そのころの私は、仕事でもプライベートでも悩んでいる時期だったのですが、『アミ 小さな宇宙人』の中に、その答えが全部書いてありました。それが今から7、8年前で、それから毎年読み返していますが、毎年新しい発見があります。どんな状況になっても、その基準が通用しないことがない。……こんなエピソードも含めて、ちょっと電子書籍だと難しいですね。電子書籍は「カツン」と当たらないですからね(笑)。
自分が高まった時、新しい作品が生まれる
――本を作られる時、冊子としての全体のイメージを考えながら作りこまれるのでしょうか?
浅見帆帆子氏: 私は本作り自体が好きなので、質感とか表紙のデザインとか、自分で全部決めてやっています。もちろんデザイナーさんはいますし、わからないときは相談しますけれど、ほとんど最後までかかわっています。たぶんうるさい著者だと思います、こだわりも強いし(笑)。でも、それは私の好きなことですから。好きじゃないことには全く興味がわかない、どうでもいい……その差が激しいと思います(笑)。
――一緒に本を作る編集者にどのようなことを求められていますか?
浅見帆帆子氏: どんな仕事でも同じだと思うんですが、お互いの信頼関係ですよね。私の場合は、書き始めてから仕上げるまで、とにかく放っておいてほしいんです。絶対に逃げませんし(笑)、時間もそれなりに守りますので、途中で「大丈夫ですか」と突っつかれたり、「今の段階でいいので、見せてください」とか言われちゃうとすごく焦るし、出てこなくなる。担当していただいている編集者さんたちは、私を信頼して放っておいてくれる人が多いです。
――新しい本を書かれる時、どのような過程で執筆を進められるのでしょうか?
浅見帆帆子氏: 自分の心を「いい状態にする」ことです。たとえば、4、5ヶ月先に本を出さなくちゃいけないという時には、まずはじめの1、2ヶ月で、自分の心をいい状態にすることに集中します。楽しい人と会って大笑いしたり美術品や音楽に浸って感性を刺激したり、緑の中を歩いたり、ひたすら寝てもいい……とにかく自分の心を気持ちのいい状態に置くようにするんですよね。それから、気にかかっている解決したいことを整理したり、掃除をしたり、きれいさっぱりの状態にする。そうすると、自分のなかにプラスのものがいっぱいたまってテンションが上がってくるので、上がりきったところから一気に書きます。
――執筆されることは浅見さんにとってどのような行為でしょうか?
浅見帆帆子氏: 「本を書くことが私の使命です」とは、まだ断言できないけれど、思ったことを本に書いたり、講演で話している時が一番楽しいし、自分らしくいられるし、流れがスムーズで、ワクワクします。やっぱり、ワクワクを感じることをすることが、その人の使命なのだと思います。
――今後のお仕事について、イメージしていることがあれば教えてください。
浅見帆帆子氏: あります! ついこの間までは、ないと言っていたんですけど(笑)、この1、2ヶ月くらい、物語を書きたいという気持ちが出てきています。今までも絵本は出していましたが、もう少し長い、字だけのストーリーを作りたいと思っています。ただ、「あ、書けそう」っていうイメージが出てきたばかりのところなので、それがいつになるかはわからないですけど(笑)。
それから、作詞の仕事も今後やっていきたい「新しいこと」なんです。数ヶ月前に、東北地方への思いを込めて、「君に贈るうた」という詩を描いたのですが、そのときから始まっている流れです。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 浅見帆帆子 』