今の夢は、データのマーケット創り
――最後に、今後の展望をお伺いします。
大澤幸生氏: 工学というのは、本来論文を書くことというよりも、実現したいものがあってそっちへ向かって行く根本的な方法を創るということです。私の夢の一つは、データのマーケットを本当に作ることです。今もデータのマーケットっていうのは、あるにはあるのだけれど、検索エンジンに少し似ています。データが沢山リストになって出てきて、そのリスト上に出てきたこのデータは誰々が持ってますよという風に出ていたり、値段が付いていたりする。そういうWebサイトはあるんだけれど、うまくコミュニケーション環境ができていない今のデータのマーケットでは、そのデータの真価を発揮できないんです。結局、宝の持ち腐れが起こっている。そこを変えて、誰もがチャンスを発見できるデータのマーケットっていうのをつくるということ。それが私の夢の一つです。
――その夢を現実のものとするために、今思うことはありますか?
大澤幸生氏: 何が難しいかというと、「この世界に興味をまだ持っていない人も乗せていこう」というそのプロセスが難しい。本の場合は今裁判などが色々あって、逆風が吹いたり、あるいは順風が吹いたりするかもしれませんが、時代はデータのマーケットに向かっていくと私は今思っています。電子出版の業界も恐らく十分有望な業界だろうと思います。ビッグデータというものがありますが、私は、あれは下手をするとピッグデータ、つまりブクブク太っているだけのデータになってしまうと思っています。だけども、本当に良質のデータはある。それは、1つ1つは小さいものだけど、ネットワーク上でつながっている。それをいかにして組み合わせて、そこからインテリジェンスを引き出すかということができれば、それはもはやピッグデータでなく、シャープさを持ったグレイトなデータとなります。これをシャープデータと呼んで、最近はSharp data are mightier than big data(シャープデータはビッグデータより強し)という講演も国内外でしています。そういう世界を創ろうというのが今、私や研究室の皆の夢になっています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 大澤幸生 』