竹中正治

Profile

1979年東京大学経済学部卒、同年東京銀行入行、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)の為替資金部次長、調査部次長などを経て、ワシントン駐在員事務所所長。ワシントンから米国の政治・経済の分析レポート「ワシントン情報」を発信し、National Economists Club(WDC)役員、Conference of Business Economists会員を務めるなどエコノミストとして活動。帰国後、(財)国際通貨研究所、経済調査部長・チーフエコノミストを経て、現職。日経ビジネスオンライン「ニュースを斬る」、毎日新聞社「エコノミスト」、週刊ダイヤモンド、トムソン・ロイター社コラムなどの諸論考のほか、書籍の執筆も多数。

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本は、アウトプットを前提に読む


――銀行の業務で、経済に対する見方はどのように変わりましたか?


竹中正治氏: さきほど大学で4年間勉強したけど、なかなか経済現象が分かった気になれなかったと言いましたが、80年代前半にニューヨークで外為ディーリングをやっていた時にも、まだ分かった気持ちになれませんでした。初めて分かったような気持ちになったのが、大阪支店に配属されて、85年から87年の夏まで通常の法人担当の融資や外国為替取引きの営業担当をやった時です。現実の企業の財務担当、海外部門の事業担当の人たちと直接話をする中で初めて、「あ、企業ってこうやって動いているんだ」と分かり始めました。企業は経済学ではミクロの単位で、その中にさらにミクロの人間がいて、組織の制約の中でいろいろ考えながら選択をして、時には間違いを繰り返したりもする現実から、なぜ景気が良くなったり悪くなったりするのかとか、なぜバブルが起こったり崩壊したりするのか、という事がようやく見えてきたんです。そういう気持ちになり始めたのは30歳のころです。だから、大学生の諸君にいつも強調している事は、「勉強というのは一生涯だぞ」という事です。大学を卒業したら勉強は終わりなんて考え方をしていたら大間違いです。とりわけ今の世の中は変化が速いですから、世の中の変化に自分自身が積極的に適応していくためには、新しい事を勉強し続けなきゃいけません。

――バブルなどの現象に対しては、右往左往したあげく、結局大きく損をしてしまう事にもなりがちですが、私たちはどのように経済の状況を見るべきでしょうか?


竹中正治氏: 私は結局「自分の頭で徹底的に考えなさい」という事を言っています。なぜバブルが起きるのかというのは、今も私の大きな1つのテーマですが、1つは一種の群れる心理、みんな同じ方向に走って行っちゃうような心理があります。学生諸君には「合理的なあまのじゃく」になれと言っています。あまのじゃくは、みんなが「右」って言うと「左」って言う。でも単にそれじゃだめで、みんなが「まだ株は上がる」と言っている時に、「本当にそんな事言えるのか?」と、うのみにせずに考える。「行き過ぎてるな」と思った時は人と逆をやる決断力、ちょっとした勇気が必要です。そうすると人生は変わります。楽しくなってくる。自分で考えずにみんなと同じ方向に走って、それがひっくり返されて、失敗したり、大きな波にのまれることを繰り返していては、ただ波にもまれているだけの人生です。私の直近の本である『稼ぐ経済学「黄金の波」に乗る知の技法』では、「少しばかりの勇気があれば、景気の波も、バブルとその崩壊も「黄金の波」に変わる!」と言う事を書いていますが、そういう見方ができるかどうかです。

――合理的な判断には、学問的な知見も必要となるのではないかと思いますが、よい勉強法はありますか?


竹中正治氏: やっぱり本を読んで考える事がベースになりますが、私にとって一番効率のいい本の読み方、勉強の仕方は、自分で書くこと、しゃべることを前提にして読む「アウトプット勉強法」です。漠然と本を読むのではなくて「何か書く」とコミットして、そのために勉強すると集中力が働きます。おそらくこれは私だけじゃないと思います。世の中に向けて強いメッセージを発信しているような人たちは、アウトプットの目的がまずあってそのために勉強する。学生には「ただ単に先生の講義を板書して、テキストを読めと言われて読んでいるだけじゃ面白くないだろう」と言っています。今は本を1冊読んだら書評をブログに書くことは誰でもできるし、Amazonのレビューも書ける。数行でもレビューを書くと、一度読んだ本がよく頭に定着します。最近はちょっとサボっていますが、私も一時期Amazonにずいぶん書いて、700番レビュアーぐらいまでいったことがあります。

電子書籍は、チェック機能が物足りない


――電子書籍はお使いになっていますか?


竹中正治氏: 私は本を読む時、線を引っ張ったり、チェックを入れたりしないと気が済まないので、実はいまだに使っていません。チェックを入れて読むと、あとでその本を思い出して引用しようという時に、パラパラめくってチェックを入れたところだけ見ていけばいい。何もチェックしないで読んじゃうと、「あれどこだっけ?」と探さなきゃならない。電子書籍はそのへんが物足りないという気がしています。

――電子書籍の未来はどのようになるとお考えでしょうか?


竹中正治氏: おそらく最終的には本が全部電子化していくでしょう。線を引いたりチェックする仕組みも、もっと良いものが盛り込まれると思っています。そうしたら、私も一気に電子書籍にシフトするかもしれません。

――本はどのように購入されていますか?


竹中正治氏: Amazonで買う事が多いです。新聞の書評を見て「あ、これ買おう」と思う事もあるし、それからFacebookの友達が「この本良いみたい」と書いているのを見て、Amazonをチェックして買う時もあります。また本屋に行って手に取る事もあります。

――SNSなどの情報も、本を選ぶ時に参考にされているのですね。


竹中正治氏: Facebookはどういう人とつながるかにもよります。良質な人たちを選んで自分のネットワークを作っていけば、良質な情報が入ってくる。Facebookで展開するコネクションは自分自身の価値観の反映で、「類は友を呼ぶ」ネットワークだと思います。私のベースはポジティブ思考で、ネガティブ思考の人たちとは無縁で生きていたい。1回しかない人生だし、悲観的に生きるより楽観的に生きる方が楽しいでしょう。だから私は、Facebookを書く時は、まあ、10に1つぐらいはネガティブなネタもあるんですけれど(笑)、基本的にポジティブなネタが中心です。

著書一覧『 竹中正治

この著者のタグ: 『大学教授』 『海外』 『アウトプット』 『経済教育』 『金融』 『為替』

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