サラリーマンの幸せの真実を教えられるはず
――本を書くきっかけは、どのようなことだったんでしょうか?
西山昭彦氏: 最初に出したのは36歳ですが、書こうと思ったのはもう少し前です。30歳ぐらいの時に「生涯で1冊、本を出そう」と思ったんです。そう思ったことが出発点で、それから書き続けもう58冊となりました。
――今まで就活や若年層向けの本を出されていますが、どのような思いで執筆をされていますか?
西山昭彦氏: 大学でゼミやサークルを思いきりやったとか、バイトでたたかれたとか、そういった人生の蓄えが必要で、急場しのぎの就活ではだめです。経験に基づいて形作られた自分、といったものが基本ですが、ちょっとした差で志望の会社に受かったり落ちたりしますから、そういった点では外的なサポートがあってもいいと私は思うんです。多少は基本ができているということが前提で、そこからのサポートが結果を作り出します。就活に勝ち働く場に就かなければいけません。そのための1歩を踏み出すために背中を押してあげることができたらと思っています。若年層の社員も、あの一言を聞いたことでその後の人生が変わるということがあります。私なら、入社2年目に先輩から「仕事ができるのは当たり前。プラスアルファを出せるかどうかが実績だ」といわれ、創意工夫を続けることになりました。そういうヒントを出せたらと思っています。
――西山さんが学生に勧める会社選びとは?
西山昭彦氏: 私は、サラリーマン研究をずっとやってきましたから、自分では「サラリーマンの幸せの真実を伝えられる」と思っているんです。その観点からの会社選びとなります。例えば大手商社が120人の大卒を採った時に、120番目で入ったとします。8割が課長になり、2割が部長になりますが、ビリなら一生ヒラで終わってしまうかもしれない。でも別のところで学生の知名度が低く、同期も20人の会社に行ったら中心的人物となり、大切にされるかもしれません。私自身サラリーマン出身で、それらの会社の内情も分かるし、多くの企業研究もしてきました。だからこそ、そういった真実視点からみんなに教えたいんです。
真ん中に立っているからこそ、アドバイスができる
――ご自身は電子書籍という物に対する可能性に関してはどのようにお考えでしょうか?
西山昭彦氏: 可能性はものすごくあると思います。書籍の何十倍にもなっていくに違いないと私は思っています。ユナイテッドブックスから出ている『稼いでいる人が20代からしてきたこと』という私の本がありますが、これを紙で出した時は全然売れなかったんです。でも電子書籍にして、値段も下げたら7万部売れたんです。「電子書籍のビジネス書では、オバケのような数字」と言われました。価格を250円とか、1週間は85円とか、そういう変動型の売り方も効果的だったのかもしれません。紙との違いで、読者マーケットの全体が電子書籍を読む人ではないし、あと消費スピードが電子書籍の方があるので、そういった差を踏まえておく必要があると思います。
――紙の書籍のメリットはどのようにお考えですか?
西山昭彦氏: データとしてPCやスマホで持っているのと、書棚で背表紙を見るというのはやっぱり違うので、その部分は本でもいいと思います。使い分けていけばいいと思います。家などでまとめて読むときは本に対して、電子書籍は節ごとといったようにスキマ時間で読めるので、そこの中で完結していることが大事と思っています。そういったように、本の概念が大きく変わっていきそうですが、読み手側の認識に応じて書き手側にも変化をもたらすと思います。
――その中間にある出版社・編集者の役割は、どのようなところにありますか?
西山昭彦氏: 以前、『編集長の情報術』を出した時に、12社の編集長を取材したのですが、すごく面白かったです。最後には「編集者はライター・記者とは、違う」という結論に達しました。ライター・記者には、人の懐に飛び込む力が求められるんです。「この人だからしゃべっちゃう」といった人間力が強みとなります。でも、編集者は多少へんくつで、普通の人と違う見方ができることが強みになる。完全に自分だけの世界に入ってしまったら誰もついてこないし、平凡ならば誰も読みません。だからその真ん中あたりに立てる、ということがキーと思いました。友人の医師を見ると、医師と患者の真ん中にいるからこそ見えるものがあって、いいアドバイスができるのではないか。それと編集者の役割とは近いものがあると思います。
著書一覧『 西山昭彦 』