鶴田知佳子

Profile

同時通訳者、会議通訳者。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、コロンビア大学経営学大学院修了。MBA(経営学修士)取得。金融業界で10年の勤務経験の後に通訳者となり、目白大学助教授を経て現職。フランス語学科卒業、イタリア在住経験もあり、英語のほか、フランス語やイタリア語も話す。 NHK「英語でしゃべらナイト」監修などのほか、著書には『よくわかる逐次通訳』(東京外国語大学出版会)、『45分でわかる! オバマ流世界一のスピーチの創りかた』(マガジンハウス)、『Let's talk business! 「何とぞよしなに」って、英語で言えますか?』(共著。NHK出版)などがある。

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人のために役立てることは、究極の幸せ



NHK衛星放送、CNNの同時通訳者、会議通訳者など、日本の通訳者として第一線でご活躍されている鶴田さんは、『世界を動かすトップの英語 ダボス会議に学ぶ』『英語で伝えるオジサン的ビジネス表現』(柴田真一氏共著)などの著作のほか、『共働き女性に贈る本』(キャロライン・バード/著)『フィデリティ 史上最強の投信王国』(ダイアナ・ヘンリーケス/著)などの書籍の翻訳も数多く手がけられています。海外在住経験が12年あり、小学校後半のアメリカ滞在や、社会人になってからのイタリア在住などのほか、過去にアジア、欧州、北米の各地域で生活されており、英語の他に、イタリア語、フランス語も得意とされています。現在の道に至った経緯のほか、電子書籍の可能性や、今後の展望についてお聞きしました。

教育者の仕事、通訳者の仕事を両立


――大学では、どのようなことをされているのでしょうか。


鶴田知佳子氏: 私は大学の研究科に籍を置き、大学院と学部の両方で教えています。大学院では国際コミュニケーション・通訳専修コースにおいて英語と日本語のあいだの通訳を教えております。実技指導だけではなく修士論文、修士修了研究の指導も行っております。東京外国語大学の大学院は総合国際学大学院といいますが、大きくわけて地域社会系・国際関係を扱うところと、私が属している言語系のところに分かれております。言語系のなかでも私がおしえている通訳は言語応用専攻に所属しており、たまたま現在はそのセクションを統括する言語応用専攻長の仕事もしております。
学部は、東京外国語学部は去年から国際社会学部と言語文化学部に分かれましたが、言語文化学部の三つのコースのうちの一つであるグローバルコミュニケーションコースのコース長をしております。その中で、通訳概論を担当しゼミを受け持っております。

――運営責任のある大学のお仕事をされながら、通訳者のお仕事をされるには、時間にかなりの制限があるのでしょうか。


鶴田知佳子氏: 大学で教えている教師としての仕事と、通訳者としての仕事をどう両立させるのかというところは、一番大変で難しいところですね。ただ、通訳というのは実践の場でのスキルが必要な仕事です。ですから、私が通訳の仕事をしているのは、指導していく上で、全く現場の仕事をしていないということは良くないと思っているからでもあります。そういう意味では、後進を育てるという大学の仕事にもつながっていると思います。
学部の入試、そして大学院の入試、ウェイトはそれぞれ違いますが、専修コースについては私が責任者です。当然通訳の仕事も選ばなければなりません。やりたいことを全てやっているというわけにはいかないので、だんだんと自分が得意な金融関係などの仕事や、あるいは生同時通訳などの「これは重要なのでぜひやりたい」というような仕事に絞らせていただいているのが現状です。

1回1回が、新しい仕事


――どのようなイメージを持って通訳をされているんでしょうか?


鶴田知佳子氏: イメージとしては「自分が話す」という感覚です。つまり、「この人がもし日本語が話せたら、どんな風に語るだろうか」ということをイメージしながら話す、それが一番うまくいきます。でも書き言葉とは違い、自分の声で伝える通訳の仕事には、1回しか聞けないという最大のデメリットがあります。翻訳の場合は何回も推敲して練り直すことができますが、同時通訳の場合は聞くのも1回、アウトプットするのも1回という非常に大きな制約があります。ただ、メリットとしては、声の抑揚をつけたり、強調したいところは間を置いたりなどの、「声」によって変化をつけることができるところです。通訳というのはあくまでも音声表現ですので、聞いている方に分かっていただけるにはどうやったら伝わるかということを考えると、前述の「自分が話している」ということをイメージして話すことが一番伝わりやすいんです。「この人は何を伝えようとしているのか」、つまり「何が」伝えられようとしているのかということを、どうやったら把握できるのかが一番のポイントだと思います。

――通訳者は、単なる言葉の変換者じゃないということですね。


鶴田知佳子氏: その場におけるコミュニケーションを円滑に進めることが通訳者の役割です。通訳というのは、時間と空間を共有した、即時性のコミュニケーションです。つまり、その場で通訳が成り立たなければ、あとで「ああ、これは分かってたのに」といくら言っても役に立たないのです。そして翻訳とは違い、読み返すことや訂正することもできないので、やはり即時性が強く、そしてコミュニケーションをいかに円滑に伝えられるかということですね。あと、先ほどもお話ししましたように、音声で伝えるということが一番の特色ではないかと思うんです。そこが難しいところでもあるのですが、やりがいがあり、面白いところでもあると思います。

――話す人によって通訳も変わると思いますが、経験を積めば応用も利くのでしょうか。


鶴田知佳子氏: 通訳の仕事というのは、1回1回が常に新しいと言えると思います。例えば、同じスピーカーの方が来日され、同じ情報番組に出演されるということがあったとします。ですが、同じ話者で同じテーマを扱ったとしても、全く同じということはありません。つまり、前に出演された時と今回出演される時は、また違う通訳になるわけです。毎回「1度きり」なんです。たいていの仕事は、熟練してくればケースやパターンに慣れてだんだん楽になるけれども、通訳の仕事というのは1回1回が新しいので「私たちってあまり楽になったことはないわね」なんて、同僚と話したりもします(笑)。

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この著者のタグ: 『大学教授』 『英語』 『海外』 『教育』 『言葉』 『通訳』

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