鶴田知佳子

Profile

同時通訳者、会議通訳者。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、コロンビア大学経営学大学院修了。MBA(経営学修士)取得。金融業界で10年の勤務経験の後に通訳者となり、目白大学助教授を経て現職。フランス語学科卒業、イタリア在住経験もあり、英語のほか、フランス語やイタリア語も話す。 NHK「英語でしゃべらナイト」監修などのほか、著書には『よくわかる逐次通訳』(東京外国語大学出版会)、『45分でわかる! オバマ流世界一のスピーチの創りかた』(マガジンハウス)、『Let's talk business! 「何とぞよしなに」って、英語で言えますか?』(共著。NHK出版)などがある。

Book Information

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執筆の動機は、情報として役に立つこと


――その後、ミラノにも行かれていますね。


鶴田知佳子氏: 6年近くミラノにいたのですが、その際に『ミラノ生活便利帳』という本を作っていたんです。また、翻訳本の『共働き女性に贈る本』というのと、『国際ビジネス用語辞典』も出しました。

――執筆するきっかけというのは何だったのですか?


鶴田知佳子氏: 『ミラノ生活便利帳』については、やはり生活情報を伝えようということですね。『共働き女性に贈る本』は、まさに自分も共働きだったので、ヒントを伝えるための翻訳ということで手掛けたんです。なので、何か自分のやっていることで情報として役に立ちたいということが執筆の動機だったように思います。

――「役に立つ」ということが、先生の原動力なのでしょうか。


鶴田知佳子氏: 究極的には、「生きていて良かった」と思えることとは、他の人のために役立てることだと思います。通訳の原点も、相手の言葉が分からない、自分の言葉が通じないという人々の間で、どうやってその言葉を仲立ちできるかというところにあったと思うのです。ですから、やはり通訳の原点も他人のために役立てることであり、それは、究極の幸せなのではないかと思ったりします。無意味なことというのは、どんな人でも決して無いはずです。“その人が存在する意味や、存在する価値はどこにあるんだろう”というのを引き出すのが教育であるべきだと思いますし、それによって、世の中で自分の居場所や役割を見つけていくということが、それぞれの人間の重要な課題なんじゃないでしょうか。



紙も電子も両方必要。使い分けが大事


――電子化のメリットとは、どういったところにあると思われますか?


鶴田知佳子氏: 大学時代の同級生に、ニューヨークにおいてコンサルタントをしている佐藤則男さんという方がいらっしゃるのですが、佐藤さんはすでに電子書籍で『ニューヨークレター』という本を出版されているんです。『ニューヨークレター』は、文字通り、本当にレターの形式で色々な方に配っているのですが、それがかなりの量に達したので、電子書籍の形で出版するということでした。電子書籍の良いところは、即効性があるところです。紙のコストも郵送するコストもかかりませんから、ジャーナルにおいても、だんだんオンライン化されてきています。その『ニューヨークレター』も、最初はメーリングリストで送っていましたが、電子書籍として共有されれば、もっと多くの方にその人の考えていることが伝わり、そしてニュースについて語っている部分には、やはり新しさに重要性があります。ですから、やはり即時性が大事なのです。そういった、情報を広く提供するという本などにおいては、電子書籍は非常に親和性が高いんじゃないかと思います。
あと、例えばタブを押せば、すぐに英語やフランス語、スペイン語などに変わって読むことができるといいですよね。

――普段、電子書籍や電子ジャーナルなどはご利用されていますか?


鶴田知佳子氏: 日経新聞と、朝日新聞、それからニューヨークタイムズの、3つの電子版をiPhoneで見られるようにしています。朝、放送通訳の仕事に行く時に開くと、ボイスジャーナルで「これが見出しトップです」という風に出てきて、忙しい時でも一応予習していけるので、便利ですね。でも、紙の良さももちろんあるので、紙も好きなんです。私はいまだにオールドファッションで、最近でこそ紙の辞書はあまり持ち歩かないのですが、昔は通訳者というと、みんな重たい紙の辞書を何冊も持ち歩くので、カバンを壊したという人がたくさんいました。今はもう電子辞書でカードを差し変えるだけですよね。でも私は類語を読んだり、広告を見たりするのが楽しみなので、紙が好きなんです。紙と電子が、いい形で共存できるといいですよね。
電子版でもらっても、大事だと思うものはあとでプリントアウトするので、やっぱり使い分けだと思います。ですから、両方必要で、片方だけだと物足りないという感じがします。人間は進歩しますから、便利なものは便利なもので使った方が良いと思います。日経新聞ですとクリッピングもできるので、検索の便利さがやはり全然違います。以前に比べて情報整理がとても楽になりました。

先人が歩いた道を、少しずつ広げながら進めばいい


――今後の展望、意気込みをお聞かせ下さい。


鶴田知佳子氏: 執筆活動でも、それから通訳の仕事でも、どちらも同じことなのですが、私が今後やらなくてはいけないことというのは、やはりこれからの若い人を育てるということだと思っているんです。これは今の仕事にも通じることですが、私も、たくさんの方に助けられてきているわけですから、これからの世界を背負っていくような人たちを育てる手助けをすることが務めではないかという風に思います。それと、今後の世界を背負っていく人たちには、私なりに「こういうことは知っておいてほしい」と思うことがあるので、それを伝えていきたいと思っています。

――今までご自身が受けてきたものを世の中に還すということでしょうか。


鶴田知佳子氏: とてもたくさんの人にお世話になっているんです。その人たちに直接お礼はできなくても、次の世代に伝えることで、継承していくということが大切ですよね。
非科学的ですが、やはり運も大事な要素のひとつですよね。めぐり合わせとでも言うのでしょうか。日本語では「ご縁」といういい言葉がありますけれども、それもとても大きいですね。

――若い人たちの、特に女性のロールモデルになっていただければと思います。


鶴田知佳子氏: それが大事なんです。「鶴田さんができたんだから私もできるはず」という風に思ってくれる人がいるというのはいいことです。まず、チャレンジしてみないことには道は開けませんので、「鶴田さんが大学院を出られたんだから、私にもできるはずだ」と思ってもらえるのであれば、それでいいと思います。先人が歩いたあとを、後の人が少しずつ道を広げながら歩いていければいいと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『大学教授』 『英語』 『海外』 『教育』 『言葉』 『通訳』

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