井上順孝

Profile

1948年、鹿児島県生まれ。東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学文学部助手等を経て、現職。専門は宗教社会学。大学講師などを務めるかたわら、近代の宗教運動の比較研究などに携わる。 著書に『21世紀の宗教研究』(平凡社)、『90分でわかる!ビジネスマンのための「世界の宗教」超入門』(東洋経済新報社)、『神道入門』(平凡社)、『フシギなくらい見えてくる!本当にわかる宗教学』(日本実業出版社)など多数。

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「面白いところ探し」のため、乱読した


――ネット以前の時代、井上先生はどのように情報に触れ、取り入れてきたのでしょうか。


井上順孝氏: 鹿児島の出身なのですが、小学校1年生の頃から本を読むことがすごく楽しみな子どもでした。もちろんルビは振ってありましたが、家にあった漢字混じりの本を読んだりもしていました。そうやって、いつの間にか漢字に慣れたように思います。ただ、家にある本の量はそれほど多くはなかったので、マンガも繰り返し読んでいました。小学校高学年の頃には、図書館で本を借りることが習性になっていました。でも1番本を読んだのは中学生の頃だと思います。

伝記、小説、ノンフィクションの類から、自然科学系のものなど色々な本を読みました。学校の図書室は1日3冊までで、市立図書館が1冊。4冊借りて、次の日返すというような読み方をしていました。「何か、面白いところはないかな?」という感じで、面白いと思うところを探しながら、飛ばし飛ばし読んでいました。本を読んで、それが身に付いたかどうかは分かりませんが、結果的には「活字が苦にならない」という効用はあったと思います(笑)。

鹿児島の川内高校というところに通っていたのですが、高校の時点で、教育に関しては割と関心がありました。「小学校や中学校の先生になれたらいいなあ」と思っていましたので、大学まで進みたいと思っていました。そこからは乱読がだんだん減ってきて、ジャンルを絞ってやる、いわゆる勉強というやつに、だんだんとシフトしていきました。受験勉強をし始めたのは、高校2年の夏ぐらいからです。今は宗教学なんかをやっていて、どこから見ても文系のようですが、実は私は、完全な理系だったのです。

――それは意外でした。文学部卒だったと記憶していますが……。


井上順孝氏: 高校の時に得意だったのは、数学、化学。苦手だったのが英語や社会。先生からは最後まで「理学部、工学部を受けろ」と言われていましたが、私は「哲学をやりたいから」と文学部に進んだのです。でも、私は完全に哲学を誤解していたというか、今から思うと、私がやりたかったのは科学哲学。だから、ソクラテスやプラトンについて学ぶなんて、全然、考えてもいませんでした。だから、大学に入ったあとでガッカリしましたね(笑)。

――大学生活はどんな感じだったんでしょうか。


井上順孝氏: 2年のとき最初に受けた哲学の講義が、「ドイツ語でハイデガーを読みましょう」という内容だったので、「ついていけない」と思いました。それで、宗教学の方に。宗教学は色々な宗教について学んでいくので、抽象的ではなく、具体的にやります。理系でいえば実験をするようなものだから、具体的なものにアプローチしていきます。東大は割と調査、実証系の人もいて、お祭りや教団の調査もやっていたから、「これだったら面白いかもしれない」と思ったんです。

私は数学も好きだったし、宇宙の法則のようなものが好きなのです。哲学には存在論とか認識論とかあり、宇宙の法則とかそういうものは、私的には数学に近いという感じがあります。今は認知科学に関心を深めているので、結局自分の思い描いていたものからは外れていなかったんだなと思います。

――それが現在の研究のテーマにつながっていくのですね。


井上順孝氏: そうですね。その後、研究を続けるために大学院へと進むのですが、きっかけは大学紛争でした。大学がロックアウトになってしまって、研究が出来なくなってしまった時に、「自分は研究が好きなんだな」と、無くなって初めて気が付きました。一方で悩みもありました。大学院に入れば、ほかのみんながすぐ稼ぎ始める一方で、自分は奨学金をもらったり、バイトをしたりという、経済的な意味ではすごくキツイ生活になります。私は学部時代から仕送りをもらわず、ずっと自立していたのですが、早く親に楽をさせたいという思いがありました。

自分が情熱を注げるものを見極めること。


――どうやって学費などを稼いでいたのですか。


井上順孝氏: 寮に入っていたので、奨学金と、足りない分はふすま貼りとか家庭教師などのバイトをしていました。大学院に入るか、かなり悩みましたが、最終的には「やりたいことをやった方がいいや」という結論に至りました。親も、「経済的にはキツイので、大学からはもう出せない。自分でやるなら、好きなようにやりなさい」という感じだったので、やることについては一切、口出しはされませんでした。それはありがたかったですね。

――自分がやりたいことを見極めることが重要なのですね。


井上順孝氏: 学問は道楽みたいな部分があると私は思うのです。奇心がないと学問はつまらないので、研究者になる人は、そこに関しては本当に見極めた方がいいと私は思います。好きなことというか、自分が解決したいこと、明らかにしたいことがあるわけじゃないですか。それにじっくり取り組めるという環境があるのは、贅沢です。その過程を学生たちに話したりして、みんなと共有したりするわけですから、いい職業だなと思います。だからこそ、一生懸命調査したり本を読んだりして、基礎力を高めてから人の前に立つという、訓練期間のある制度になっているのは当たり前。“何に情熱を傾けるか”というのは人それぞれ。時間を忘れてやり続けられることを、自分で見つけるしかありません。

著書一覧『 井上順孝

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