松井孝典

Profile

1946年、静岡県生まれ。東京大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。NASA研究員、マサチューセツ工科大学招聘科学者、マックスプランク化学研究所客員教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て同名誉教授。2009年4月より千葉工業大学惑星探査研究センター所長。 専門は、比較惑星学、アストロバイオロジー。 著書に『地球システムの崩壊』(新潮選書)、『宇宙人としての生き方』(岩波新書)、『我関わる、ゆえに我あり』(集英社新書)、『天体衝突』(講談社ブルーバックス)、『スリランカの赤い雨 生命は宇宙から飛来するか』(角川学芸出版)、『生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門』(文春新書)など多数。

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関心事はとどまるところを知らず、新たな執筆の材料に


――毎日の感動の結果が、次の本への材料になるんですね。


松井孝典氏: そうです、次に書きたいと思っているのは、“人間圏の思想について”です。そのためにはギリシャ以来の思想の系譜を追って、似た考えをもつ人がいたら、その考えについて書かなければいけないので、哲学・思想書を読んでいます。その中で唯一全く同じ言葉を使っているという人に出会いました。ハーバード・スペンサー(イギリスの哲学者、社会学者)です。僕が人間圏を考えだした時に、地球や宇宙の歴史で、「分化というのが1番重要な概念」、「進化論じゃなくて実は分化論」ということを書いているのですが、ハーバード・スペンサーも同様の発言をしていました。ですから、ハーバード・スペンサーと僕の違いを書いておかないといけないなと思って。時代が違いますから、宇宙についても地球についても生命に着いても、科学の手法に関しても僕の方がより包括的だし、総合的だし、分化ということに関して深い科学的意味を考えていると思っています。彼の頃には地球システムなどの概念もないし、宇宙の発展の歴史も、地球の発展の歴史や生命の起源などについて本質的な理解はまだ全然及んでいませんから。



最後は、最近関心のあることとしてもう1つ、「龍」の伝説にまつわるお話です。龍というのは世界中で伝説がありますが、僕は彗星や流星雨、隕石にまつわる話が「龍」という伝説になっているんじゃないかと思っているのです。龍と過去の彗星活動を調べ尽くして、それを本にまとめようと思っています。科学者として証拠のない話はできないので、まずこの仮説を裏付ける証拠を見つける調査をはじめなければいけない。そのために、今から10万年前までの湖底の堆積層を調べて、宇宙からの痕跡の変動を追いかけ、神話が生まれた時代との対応性をチェックしています。その部分は科学の話になります。

まだありました。「赤い雨」粒子という細胞です。『天体衝突』の前に『スリランカの赤い雨』という本を出しているんですが、その赤い雨細胞というのがなんなのか、ということを今突き止めようとしています。世界の誰もがまだ知らないことだし、これはひょっとすると「生命の起源は宇宙」という生命誕生の仮説の1つであるパンスペルミアに関係しているかもしれない。これらが今関心のあることです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 松井孝典

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