西山勲

Profile

1977年生まれ、福岡県出身。世界中のアーティストたちの日常を訪ね、作品への考察から、表現と向き合う彼らの日常へとフォーカスを深めてゆく雑誌『Studio Journal knock』を2013年に創刊。旅先の宿をオフィスに個人で編集・制作・発行まで旅先で行うスタイルで、これまでタイ・カリフォルニア・ポートランド・中南米・ヨーロッパと5タイトルを発行。他にも、雑誌「TRANSIT」、ビジュアルマガジン「LUKETH」、書籍「月極本」(YADOKARI出版)などで、撮影・編集・デザインを手がけている。

※各本の詳細はプロフィール内リンクよりご確認ください

Book Information

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ラテン系一家で育った恥ずかしがり屋



西山勲氏: ぼくの生まれは奥堂という福岡県は博多の中心部で、博多祇園山笠がおこなわれる大博通りという場所で育ちました。山笠の行事にも小さいころから駆り出されていましたが、むちゃくちゃ恥ずかしがり屋で、ギリギリ「これから走るよ」というところで逃げ出したりするような子どもでした。

ハートが弱いのかもしれません(笑)。もう群集に紛れていたいという性格でした。だからというわけではないですが、小学3年生ぐらいから、サッカーを始めました。始めてみると、自分の居場所を見つけたかのように、のめり込んでいました。

本当にそれ以外の思い出がないぐらいサッカーに没頭していたので、高校も福岡の東海第五というサッカーの名門校に進みました。ただし、鳴り物入りで入ったわけではなかったので、ずっと球拾いをしていました。特待でもないノーブランドの球拾いから、3年までにレギュラーになった選手は過去ひとりだけいたようですが、「どうしてもここから這い上がってやる」という気持ちでやっていましたね。

球拾いだけでは、練習ができないので、それ以外の時間を朝一から終電まで、監督に名前を覚えて貰うために、朝出勤する時間帯を狙って校庭でひとり走ってみたりと、一年間ずっとそんなことをやっていました。

そんな毎日を送っていたある日、親父が「勲、お前そんなにサッカーを一生懸命しよるなら、こういうのがあるぞ」と言いながら「ブラジル留学生募集」という新聞記事を見せてくれました。当時、三浦知良さんの『足に魂こめました』という本を読み込んでいたのもあって、即座にお願いしました。

――素敵なお父様ですね。


西山勲氏: うちの両親はちょっと変わっていて……、父親はタンゴやサルサを踊るのですが、スペインやイタリアとかまで「ミロンガ」という社交の場にタキシードを着て出掛けていく人なんです。この間も、ぼくが行く少し前にオーストリアで踊っていました。

母もサルサを踊るのですが、それよりも海に潜るのが好きなようで、キューバとかアルゼンチンまでダイビングに行っています。そんな風でしたから、盆正月にもなかなか集まらない変な家族でした。

自由な両親のもとで育てられ「何々しなさい」と強制されることは一切ありませんでした。その影響は多分にあると思います。ぼくの弟も、今、南アフリカで現地のプラントを建設する日本人技術者のために、フライパンを振っているというなんだか変わった仕事をしています(笑)。

サンパウロの山奥で留学生活



西山勲氏: 父親にお願いして受けることになったブラジル留学のセレクション(選抜試験)は東京でおこなわれました。セレクション当日は10年に一度ぐらいの幸運の日だったみたいで……(笑)、ものすごく良いパスたくさんまわってきて、ファインゴールを重ねることが出来ました。

それが、ブラジルから選手を見に来た監督の目に留まって、100人くらいセレクションに来た人たちの中で奇跡的に留学メンバーに選ばれました。嬉しい気持ち半分、楽しかった高校生活や友人と別れることに寂しさを感じましたが、とにかく行ってみようと決心しました。留学制度のある大分県佐伯市の日本文理大学附属高校に籍をうつし、高校2年生から1年間、ブラジルへ旅立つことになりました。

――ブラジルでの留学生活はいかがでしたか。


西山勲氏: サンパウロの山奥にある養成施設で、1年間日本人の留学メンバーと寝食をともにしました。週に何度か現地の学校に通い、授業を受けながらポルトガル語を覚えました。サッカーと勉強以外することもないので、部屋では留学生活中に起きた出来事を手紙にしたためては、毎週のように送っていました。インターネットもない時代でしたから、そうした往復書簡は束になるくらいでした。悶々としながら、いろんなことを考えては書いていましたね。

著書一覧『 西山勲

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