“歴史”と“今”をつなぐ
文筆家、近現代史研究家の辻田真佐憲さん。政治と文化、娯楽との関係をひもとき、軍歌やプロパガンダなどの切り口で“歴史”と“今”を結ぶ文筆活動をされています。「今を考えるヒントに」発信される辻田さんの、執筆に込めた思いを、歩みとともに伺ってきました。
歴史と今を結びつける近現代研究
――政治と文化、娯楽との関係をひもとく執筆活動をされています。
辻田真佐憲氏: 過去の“歴史”が、“今”とどうつながっているのかという視点から、近現代のプロパガンダ、国歌、軍歌という切り口で研究、執筆をおこなっています。軍歌CDの監修や、軍歌に関する本も書いていますので、「軍歌研究家」として見られることもありますが、本来はそれに限らず、娯楽と政治・文化の関係を取り扱っています。2015年は戦後70周年ということもあり、各メディアでの対談やインタビュー、執筆と忙しい毎日を送っていました。
普段は自宅兼事務所で執筆しているのですが、扱うテーマ上、どうしても古い文献に当たることになるので、そうした資料が部屋に貯まる一方です。狭い部屋なので、天上まで、四方八方に摩天楼のように積み重なっています。
――最新の活動報告をされているTwitterアカウント名のreichsneetとは。
辻田真佐憲氏: 「ライヒスニート」と読むのですが、“ライヒ”はドイツ語で国家、それに“ニート”をつけて、国家に養ってもらっているもの、すなわち公務員という意味合いで名付けました。公務員を批判するとかではなくて、単純に私自身がその時公務員であったため、自虐的に命名しただけです。ついついネタを込めたくなってしまうのです。今は公務員を退職して、文筆業一本になりました。もともと好きだったミリタリーと、文学、執筆のきっかけとなるサイト開設など、助走期間を経て今に至ります。
根本の視座を哲学に求める
辻田真佐憲氏: 小さい頃の私は、どちらかというとゲーム好きのインドアな子どもで、ミリタリー関係が好きになったのも、中学生のときにハマった『提督の決断』というゲームがきっかけでした。
中学から私立の学校に通っていたのですが、電車通学の時間が長く、車内での読書習慣が身に付きました。そこでゲームから入ったミリタリーへの関心と、読書による文学への興味がつながりました。中学生の頃は、一流の詩人や音楽家も関わっていた軍歌、人文関係や詩が戦争にどう関わっていったのかに関心がありましたね。
中学・高校時代は、最寄り駅の古本屋にあった100円や300円コーナーの棚から、面白そうな本を片っ端から買い込んで、それを授業中ずっと読んでいました。ちょうどその頃、歴史教科書問題や、米国での同時多発テロなどが起こったときだったのですが、何が起こっているのかを知りたくて論壇誌の類いもすすんで読んでいました。不安定な世の中に対する、確固とした何かを求めていたのかもしれません。世の中の状況に応じて右往左往するのではなく、根本からの視座を求めたいと、大学は哲学専攻へ進むことにしました。