C.W.ニコル

Profile

1940年7月17日、ウェールズ生まれ。日本国籍の作家、ナチュラリスト。17歳でカナダに渡り、その後、カナダ水産調査局北極生物研究所の技官として、海洋哺乳類の調査研究に当たる。以降、北極地域への調査探検は12回を数える。1962年に空手の修行のため初来日。1980年、長野県に居を定め、執筆活動を続けるとともに、1986年より、森の再生活動を実践するため、荒れ果てた里山を購入。その里山を『アファンの森』と名付け再生活動を始める。2002年、より公益的な活動を全国展開するために、「財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団法人」を設立し、理事長となる。2005年、英国エリザベス女王陛下より名誉大英勲章を賜る。

Book Information

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――英国だと、ローワン・アトキンソンさんとか。


C.W.ニコル氏: そうそうそう。ミスター・ビーン!

――ああいう方というのは、英語がわからなくても笑うことができますよね。


C.W.ニコル氏: そうそうそう。

――世界人類共通のユーモアを持っていらっしゃいますよね。


C.W.ニコル氏: はい。私はそのユーモアにチャレンジしてみたんですよ。英語で書いて翻訳された本があるんですよね。『しらかばの物語』。でも、その“しらかば”は木じゃなくて、白いカバです。それでテーマは誤訳。間違った翻訳。いつか読んで。

――はい、読みます!


C.W.ニコル氏: 内容はスケベですけど。

――あ、そういう本なんですか(笑)。


C.W.ニコル氏: そう。それから『帰ってきたたぬき』。それもユーモアですね。

――英国のお笑いは、本当にユーモアに溢れていますよね。


C.W.ニコル氏: 溢れていますね。

――他に何か恋しい物、ありますか。


C.W.ニコル氏: まあ、その2つぐらいですね。それから、ウェールズだったら歌ですね。今はちょっと変わっているけど。こういうような事があるんですよね。10人の英国人が集まったら並びます。10人のアイルランド人がいたら戦争になる、喧嘩になる。10人のウェールズ人だったら合唱団。

――それぐらいみなさん歌が好きなんですか。


C.W.ニコル氏: うん。パブの中でも歌っているんですからね。

――日本にも以前はありましたか。


C.W.ニコル氏: あった。でもあの文化を殺してしまったのは、カラオケですね。ウェールズ人は、すぐハーモニーになっちゃうんですね。

実はね、戦争が終わって間もなくだったかな。スコットランドの島と島の間に貨物船が沈没したんです。で、その貨物船がウィスキーを運んでいたんです(笑)。で、そのウィスキーを村の人が全部かっぱらって(笑)色々な所に隠していたんですよね。で、50年後でも時々出でくる(笑)。酒税払っていないから、政府は必死に探してね。何人か刑務所に入ったんです。でも言わないんです、どこに隠していたか。

――面白い話しですね(笑)。


C.W.ニコル氏: そういう映画も作られたんですよね。

――映画とかにもパブはよく出てきますね。40人しかいないような村でもパブは絶対にあるんですか。


C.W.ニコル氏: それは絶対ありますよ。絶対。それから、これは本当の話で、スコットランドなんですけど、ある大地主がワインとウィスキーとブランデーとかのすごいコレクションがあったんです。で、彼の遺言で、僕が死んだ時に、このワインを全部墓に入れてくれと。それで村の人々がそれを聞いて、みんな男たちなんだけですよ、スコットランドの葬式は。みんなワインをお墓のまわりでガブガブガブガブ飲んで、しょんべんをかけてたって(笑)。これは本当の話。

――何かいいですね、残された人たちが、喜んで(笑)。おもしろいお話したくさん伺えてうれしいです。


C.W.ニコル氏: 実はね、私は1964年の11月、もう日本に2年以上いた時に、空手道場にちょっと変わった男がいて、白帯ですね。それで上半身はすごく筋肉がついているのに、足がニワトリみたいに細かった(笑)。いつも鏡で自分を見ているんですね。それで空手の若い先生達がその人を先生、先生と呼んでいたんです。でも俺は初段、黒帯。あいつは白。じゃあ、先生じゃない。で、僕は“君”と呼んでいたんですね。ミシマ君って。それでいじめていた。
それが、三島由紀夫(笑)。

――え!びっくりしました。


C.W.ニコル氏: 組み手やって。後で、先輩に、『あれは有名な作家ですよ。三島由紀夫って知らない?』って。でもユキオって通じなかった。実は僕は『潮騒』を読んでいて。こんなにいい小説は日本にはないと思っていたんですけど。あんな、いつも鏡を見ているあの男が、あんな繊細な物を書けると思わなかったんですよね(笑)。

――いろいろな事があるんですね。そういったのは、道場の中では普通なんですか。


C.W.ニコル氏: だと思うよ。段というか、レベルの上下関係がハッキリしている。

――それは外国でも同じなんですか。




C.W.ニコル氏: 外国の空手道場は、今の日本の空手道場より厳しい。昔の日本そのまま。日本のほうがよっぽどダラッとしているというか。ちょうど1960年代に3段上の若い先生が、世界中に行っちゃったんですね。特に我々の流派、松涛館は世界中に行きました。その人たちは、昔の空手のしきたりを教えているからね、厳しいです。

――技だけじゃなく、生活全般もですか。


C.W.ニコル氏: そう。技だけじゃなくて礼儀も。だからすっごく礼儀が正しい。

――色々な流派の方がいらっしゃるんですね。


C.W.ニコル氏: うん。松涛館が一番大きいです、数も。

――空手を遅く始められる方とかもいるんですか。


C.W.ニコル氏: いますよ。僕が知っているのは、60才を超えた人が、うちの道場に来ていたんですね。50才を超えた女性もいたんですね。全然遅くないですよ。

――運動神経とかも関係しますか。


C.W.ニコル氏: いや、空手のチャンピオンになろうと思ったらそれはあるでしょう。どのぐらい時間をかけられるかと。でも僕の編集者の友達1人は40を超えて空手を始めたんですね。で今、3段か4段かな。

――何か生活もメリハリがついてきちんとしそうですよね。最後にひとつ質問をさせて下さい。ニコルさんにとって、本というのはどういった存在ですか。


C.W.ニコル氏: いやぁ、それは本によるけど、そこに知恵があれば別の世界に逃げられるんですよね。だから今晩寝る前に私はたぶん歴史の本は読んでいないな、たぶんあのふざけているファンタジーの世界に入るのね。だから別世界の窓。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 C.W.ニコル

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