河合太介

Profile

成長、変革、戦略推進のための組織人事の専門家 現在特に中心とするテーマはリーダーシップとチーム力と職場コミュニケーション。その他、事業プロデューサーとして実務の戦略、マーケティングにも明るい。金融系総合研究所、外資系コンサルティングファーム経て現在に至る。代表的な著作に27万部超のベストセラーになった「不機嫌な職場」をはじめ、ケビン・D・ワンのペンネームで10万部超のベストセラーとなった「ニワトリを殺すな」等多数。早稲田大学大学院 商学研究科 非常勤講師も務めている。

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自分も「非常識社員」だったので、若い人に説教はできない


――ぜひ河合さんにご意見をお伺いしたいのが、いわゆる入社3年目で30%以上が辞めると言われています。どのように働くと世の中が良くなると思いますか?


河合太介氏: 僕も、最初入って配属されたのがコンサルティング事業部で、もうその日に「辞めてやろう」と思った人間なんですよ(笑)。僕は、基本的に人と仕事をすることだけは絶対やりたくないと思っていたんです(笑)。人が嫌いではないんですよ。多分家が商売をやっていたせいだと思うんですけれど、その反動があって対人を仕事にしたくないところがどこか自分の中にあって、僕は大学での勉強が政治関係だったので、これを僕は仕事にしたいなと思っていたんです。で、ちょうどその時代に「総合研究所」というシンクタンクブームが起きて人の採用が始まったので、「お金をもらいながら研究できる、ラッキー」みたいな、そういうはしたない考え方で研究所を選択したんですよ(笑)。

――とても意外です。


河合太介氏: 自分が好きなことを調べて、世界の経済社会の動きをレポートできると思っていたんです。でも、配属されたのはコンサルティング事業部ってカタカナの部署だし、しかも「人事コンサルティングって、人の…自分のやりたくないことのど真ん中じゃん」みたいな(笑)。絶対辞めてやるとか思って、結構ぶーたれ社員でした。で、「お前、ドラフト外だから」とか言われて。でも、上司も先輩もいい人たちで、「お前、ぶーたれないで頑張ってみろよ」みたいなことを言われて、「じゃあ、まあ頑張ってみます」みたいな感じでした。

――そんな時代があったんですか。


河合太介氏: 僕は非常識社員だったと思いますよ。だって、その金融機関の業務内容も知らなかったんです。結構人気の銀行だったらしかったんですが、そもそも銀行員になるつもりがなかったので、革靴で働いていると疲れるんですよ(笑)。疲れるなあと思ったので健康サンダルのほうがいいだろうとか思って、ある日健康サンダルをカバンに入れて持って行って、健康サンダルに履き替えて行内を歩いていたら、すごいけんまくで後ろから怒っている人がいるんですよ。振り向いてみたらすごい顔を真っ赤にして怒っているんです。でもそれが社長で、冷静に耳を傾けると健康サンダルで歩いていることを叱っている。僕からすると、「別にそこはお客さんが来るところでもないし、このほうがツボを刺激されて頭が働くし、合理的に考えるといいじゃん」と思ったんですけれど、どうもダメみたいで。

――でも、新入社員の身分で社長を怒らせることができるってすごいですよね(笑)。


河合太介氏: 一応歩き回るのはやめて、だけど仕事をしている時は健康サンダルでしたね。今は結構そういうことが許されるようになっていますけれど、23年ぐらい前のバブル期なのでそんなことは許されない時代だったんですよ。なので一応、隠れて履いていました。今は便利になりましたよね、靴を履いているように見えるようなサンダルもありますものね。当時一人暮らしをしていたので、朝は面倒くさいじゃないですか。朝早くに行って、誰もいない時間にコンビニの弁当を食べる分には迷惑かけないだろうと思って、買って食べていたら隣の部長さんがすごく怒るんですよ。で、聞いてみるとけしからんみたいな感じで(笑)。とにかく、僕には「今どきの若い人は」なんて言う資格は全くないですよね。とてもダメな人でした。でも素直なところもあって、叱られるとやめるんですよ(笑)。はむかうことはしなくて、「いけないことなんだ」と思って、一応そこの風土、文化なので止めました。

どんなキャリアにしたいか、初めから固定しないほうがいい



河合太介氏: 最近キャリア研修なんかでもよく言うことなんですけれど、どんな仕事に就きたいですかとか、この先どんなキャリアって言った瞬間、具体的な職業がすぐに問われるんです。営業とかマーケティングだとか、研究開発だとか、研究開発の中でもこういうようなのだとか。それはそれで僕は否定しない。でも例えば40代研修でやっていて、50代とか、この先自分がキャリアでどんな職業と言われたって、もう40代だし、そんな職業は今更もう見つかりませんと言うんですけれども、でも別に具体的なある特定の職業である必要はないんじゃないですか。自分にとって幸せな状態、自分が楽しいと思える状態が大切なのです。

僕は20代後半、30歳の時にたまたまそういうことを考える機会に恵まれたから自問自答して、比較的早い段階で自分の中に提起できたわけで、多分25歳前後でそれを見つけ出すってまだ難しいと思うんです。だからそう焦らずに、今のことを一所懸命やっている中で、自分にとって好ましい状態を見つければいいと思うんですよね。

ただし、一所懸命やっていないと多分見つからないですよ。一所懸命やると、「ああ、これ好きだな」とか、「やっぱりこれは好きになれない」ってなると思うんですね。僕なんかはお金をコントロールするためにコンサルティングをするのって、一所懸命やった結果としてやっぱり好きじゃないんですよ。僕は一所懸命やったけれども、それが自分には心地よくなかったんですね。一所懸命やって初めてやっぱり好きじゃないなというものがわかるし、それは新入社員の時だとかにはわからない。

――とにかく一所懸命やることで、どんな道かわからないけれどどこかにつながっていくんですね。


河合太介氏: そうです。一所懸命というのは僕の中で定義があって、自分ではなくて相手が喜んでくれる状態までやるというのが、僕の中の「一所懸命」の定義なんです。自己満足じゃなくて、相手が「いいじゃん」、「面白いね」「ありがとう」と言ってくれるところまでやると何かが見えてくると思います。それは最初に就いた「職業」というものに決してとらわれる必要はない。でもそれを突き詰めていく中で見つかる可能性があるなと思います。あまり最初から自分がこうじゃなきゃって思わないほうがいいかもしれない。もちろん最初から目的がある人はラッキーですよ。でも、世の中で最初からそれが見つかって、それが天職でずっといられる人なんて、確率論でいくとほとんどないんじゃないですかね。

ブレずに60歳まで、志のある人や組織を支援していきたい


――最後の質問です。講演、教育、著作活動も通じて、今後どんなことをやっていきたいと思いますか?


河合太介氏: 自分の決めた志のある組織、人を応援するというのは、多分僕が60歳までやりつづけることなので、これはブレないですね。本当を言うと、僕はもともと政治の勉強もしていたので、今の政治の状態にはもちろん言いたいこと、怒り、いろんなことがあるんですけれど、だからと言ってじゃあ政治家になりますかというと、多分そういう存在として生まれてきていないんだろうなと(笑)。つまりここまでのプロセスの中で、そっち関係の出会いってないんですよ。もしかしたらこの先出てきてチェンジが起きるかもしれないですけれど、現時点の中で無理をするプロセスではないなと思っているんです。



そういう意味では、「社会を幸せにしたいと思ったら、まずあなたの一番近い人を幸せにしてください。周りを幸せにすることが、あなたができる社会を幸せにすることができることです。」というマザーテレサのこの言葉が僕は好きなんですが、関わっていく人たちに、「ああ良かった、河合さんと仕事をして」と思ってもらえるような関係性を、1個1個の仕事の中で一所懸命やっていきたいですね。そして、良かったと思ってくれた人が、また今度自分がリーダーシップを取る時に少しでも次の人につなげていってくれれば、というのが僕の中の成果イメージですね。何か機会が変わった時がきたら、それはまた縁なので、その時はまた再定義するかもしれないですけれどね

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『漫画』 『コンサルティング』 『組織』 『経営』 『キャリア』 『独立』 『幸せ』 『志』 『利他的』 『イメージ』

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