長く覚えていてもらうために、次世代のファンを獲得したい。
――どんな思いで作品を書かれていますか?
戸梶圭太氏: 昔から自分のを作品を読んでくれている人はありがたいし大好きですけれど、今願っていることは、新しい世代のファンを獲得することです。
20年周期説というのがあって、例えばある映画監督が15歳の時に、何かとてつもなくインパクトのある作品に出会うとします。それから自分が作品を撮れる立場の35歳ぐらいになって、15歳の時に読んで感銘を受けた本、「あの時自分にトラウマを与えたのあの作品を撮りたい」と思うことがある。実は監督が若い時に大好きだったものを映画化したなどということも多いのです。
人間は自分が感性豊かな頃に接した作品は、20年たとうが30年たとうが、忘れない。感性の豊かな若い人にインパクトを与えて覚えていてもらうということはとても大事です。
――今までのファンも大事にしつつ、若い読者も獲得したいのですね。
戸梶圭太氏: 覚えていてもらえるかもしれないですし、その体験があったから、「自分も小説家になろう」と思う人もいるかもしれない。そういうきっかけになったらいいと思います。僕は15歳ぐらいの時に筒井康隆さんやドナルド・E・ウェストレイクを読んでいたので、20年ぐらいたって、その影響を如実に受けたようなものを書きました。
――読書や執筆はどのような行為だと思われますか?
戸梶圭太氏: 良かれ悪かれトラウマを与えたり、与えられたりする行為だと思います。
好きなことをさせてもらえた幼少時代があったからこそ、今がある。
――戸梶さんは、幼少期はどんな風にして過ごしてきたのでしょうか?
戸梶圭太氏: 親が医者なんです。といっても大きい家に住んでいたなどということはなくて、でも微妙なお金持ちの息子でした。30歳ぐらいになって、「戸梶さんってなんだかいいところの坊ちゃんっぽいところありますよね」と言われまして、学習院もそういう人たちが多かったし、やはりそうなのかなと(笑)。
――ご両親から「こういう道に進め」と言われたことはなかったのでしょうか?
戸梶圭太氏: 兄が医者になったからか、僕は特に何か言われることもなかった。でも変なプレッシャーをかけられることもなく、好きなことをやっていればよかったという土壌があったからそこ、今があるんじゃないかなと思います。
――作品をお書きになる原動力はどんなところにあるのでしょうか?
戸梶圭太氏: やはり自分のような書き手が他にいないのが大きいです。自分を1つのジャンルとして考えると自分が書かなくなれば、この手の小説は日本から消えてしまうような気もします。
著書一覧『 戸梶圭太 』