小暮真久

Profile

1972年生まれ、東京都出身。 早稲田大学理工学部機械工学科卒業、スインバン工科大学工学修士号取得。 マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社で ヘルスケア、メディア、小売流通、製造業など幅広い業界の組織改革・オペレーション改善・営業戦略などのプロジェクトに従事。 同社米ニュージャージー支社勤務を経て、2005年、松竹株式会社入社、事業開発を担当。 2007年にNPO法人TABLE FOR TWO Internationalを創設。 2011年にはスイスのシュワブ財団が表彰する「アジアを代表する社会起業家」5名の1人に選ばれた。

Book Information

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電子書籍でも思いや理念が伝わるのであれば、こだわりはない。


――今、ユーザーが紙の本を電子化して、デバイスで読むという風潮がありますが、書き手としてお気持ちをお聞かせください。


小暮真久氏: 自分が出した本に関しては、売れることよりも、知ってほしいという意味がすごく強い。僕たちは数名で運営している団体なので、知ってほしいと思いますが、人海戦術だと限界があるわけで、だからこそ本というのはすごく役に立ちます。実際に紙でも電子書籍でも、僕らの思いや理念が伝わるのであれば、そこにこだわりはありません。ただ、講演会に行くと、紙の本を大事そうに持って来てくれて、「サインをしてください」と言われることもあるので、電子書籍はサインができないところだけが少し残念です。サインで読者と著者とがつながる感覚が持てるから、本ごとに著者サインができる機能があればいいと思います。あと、少し怖い部分もあるかもしれませんが、僕は買ってくれた人とダイアログを持ちたいなと思っています。電子書籍で読者とつながって、読んだ感想をいただいたり、それに対してレスポンスしたりしたいなと考えています。よく、「TFTに参加したいのですが、どうすればいいんですか?」という質問がきます。そういう時に、ポンポンポンとキャッチボールができるような機能が電子書籍にあったら、面白いなと思います。

――それは今のやっている活動と本ならではのことですね。


小暮真久氏: 朝活系の読書会を、僕の『「20円」で世界をつなぐ仕事』でやって、「こんな意見が出ました」といった、事後報告をいただくんです。「それならば僕を呼んでくれよ!」というぐらい、色々と面白い意見が出ている。その電子書籍版のような、著者と読者だけではなく、読者間でもやりとりが簡単にできるような機能があると、それも面白いと思います。Facebookでもできるのですが、せっかくKindleを持っているのだったら、そういうのもありかなと思います。ブックサークルのようなものができると、電子書籍ならではの面白さが出ていいのではないでしょうか。

Kindleは寝かしつけの時のかっこうの読書ツール。


――Kindleをお持ちだそうですが、よく使われていますか?


小暮真久氏: 電子書籍はよく使っています。ただまじめな本は1冊も入っておらず、脳休め用のものばかりです。子どもが0歳と2歳で、すぐに寝ないので、アイドルタイムが多いんです。子どもを抱いて片手で見られますし、寝かしつけの時は電気がつけられないから、電子書籍はとても便利です。

――そういう利用方法は初めてお聞きしました。


小暮真久氏: 僕は紙ざわりが好きなので、紙の本を読めればいいのですが、今はそんな時間がありません。昔はお風呂で読むのが好きで、結構しわくちゃにしてしまいました(笑)。でも今は、お風呂の時も子ども2人と一緒に入るため、長風呂はできないので、本を読む時間がなく、寝かしつける時にKindleで読むという感じです。あとは、電車の移動時間やアポ先に行く時に読みます。Kindleは時間がないという人には最高だと思います。今は、時代小説をよく読んでいます。山本一力さんなどのように、すっと入れるものは読みやすくていいです。でも、今日持ってきたのはこの山崎亮さんの本です。

――『ソーシャルデザイン・アトラス』ですね。


小暮真久氏: 最近読んだ中では、この本がすごくよかったです。この本では、デザインの力で社会を変えていく様々な事例を探し出して、そこに解説を付けている。この本の内容は、脳への刺激になりますし、何か自分たちで新規事業を考えなければいけない時に、アイデアとして参考になるのではないかと思います。

育児をするようになって、一般の人の生活に、より「近づけた」。


――お仕事、育児もされていますが、普段はどのように過ごされていますか?


小暮真久氏: 今は、育児に割く時間の比率がとても高いです。今日も保育園に送っていったら、「今日お父さんラジオ出演ですよね?」と言われました。夕方から盆踊りがあるんですが、その時間に、電話会議が入っているからどうしようなど、そういうことを考えたりもしています。育児を通じて、仕事ではなく生活の時間がすごく増えているので、気付くことも変わってきたような気もします。「こういう社会サービスがあったら便利だな」と思うようになったり、そういうことに理解がある人の言葉が自然と入ってきたりします。

――気がついてよかったなと思われたのは、どのようなことでしょうか?


小暮真久氏: この間ネットを見ていたら、DeNAの社長の南場さんの講演のスピーチが出ていて、南場さんは鉄の女性のような印象があったのですが、そのスピーチには彼女のヒューマンなところが表れていました。DeNAの社員でお子さんを持ちたいという人には、赤字の頃から子どもが生まれた時には育児補助のようなものを、彼女のポケットマネーで出していたそうです。「私は子どもがいなかったけれど、会社でそういうことは大いに奨励したい」ということを仰っていました。「これからの経営者は、従業員の満足度を上げないといけない」と感じました。バットカンパニー=ブラック企業は絶対に生存できない。これからは従業員の福利厚生や子育てとの両立のようなものが一番重要になると、ハーバードの教授が言っていたのを聞いて納得しました。そういう経営モデルを知っておくのも、ネタとしてもよかったりします。

――社会の仕組みは徐々に変わりつつあるのですね。


小暮真久氏: コロコロと小石が転がっている音は聞こえますが、まだ大きなエネルギーにはなっていない。DeNAの南場さんは経営者の中では理解がある方で、マイノリティーだと思います。うねりにしていくには、まだまだ足りないと感じています。

――お話をお伺いしていると、必ずしも社会的な幸福と利益の追求は相反するものではないのだなと感じますが。


小暮真久氏: 僕はそう思っていますが、実績で残している企業は少ないし、マイノリティーなので、まだ皆さんが信じていないということだと思います。直近の本を書かせていただいた時にもそういう思いがありました。例えばユニクロの難民への衣料支援など、そういうことをやりたくて会社に入った若い人がたくさんいますし、ユニクロはそういう活動をしつつ利益も出しています。あれは慈善行為ではなく、1つのマーケティング活動なのだと明確にうたっています。あそこまでハッキリ言うのもすがすがしいなと思う。そういう企業があるというのをもっと知ってほしいと思います。

著書一覧『 小暮真久

この著者のタグ: 『英語』 『旅』 『海外』 『食』 『子ども』 『運動』 『NPO』 『育児』

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