本を執筆している時には「神が降りてくるような」感じ
――書くことに関しては、昔からされていましたか?
鈴木貴博氏: 伝える力といったものは、昔から僕にはあったんだと思います。ワープロが登場したのが僕にとってはすごく追い風だった。筆圧も高いし、原稿用紙でものを書くというのはあまり向いてなかったのですが、ワープロだと考える速度で書けるようになったので、それが作家になれた最大の理由だと思います。
――執筆のスタイルはどういった感じなのでしょうか?
鈴木貴博氏: 「自分の中に神が降りてくる」という表現の仕方をしています。テーマだけ決まっていて結論がないといった状態でも、書き始めた時に自分の中に色々なものがざーっと入っていく。結末がどうなるのかが分かってない状態で書き始めて、終わってみると「ああ、こういう結論だ」といった感じになります。自分の頭の中で思考実験をしていて、それを文章にしていくといったスタイルで、僕の本やコラムなどは構成されていくんです。
――書き始める時の導入儀式はありますか?
鈴木貴博氏: コンディションを整えるんです。すこぶる健康な状態にしなきゃいけないので、例えば食事をして胃が重たいといった状態はだめです。だから「今日は書くぞ」という日は食事も抑えたりします。
でも、集中しすぎてもダメなので、ずっと取りためてあったテレビのドキュメンタリー番組を見たり、音楽を聴いたり、本を読んだりしながら、「じゃあそろそろ書こうか」といった雰囲気にもっていきます。だから、書く時は誰にも会わないし、人からの連絡も取りません。
ボストンコンサルティング時代から、ビジネスの楽しさを書きたかった。
――本を執筆されるきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
鈴木貴博氏: 本当は、昔から本が書きたかった。でも、ボストンコンサルティンググループという世界的な組織の中で著作物を作ると、社内プロセスがすごく大変なのです。会社としてのブランディングがあるので、いい加減なものを出されては困るといったこともありますし、書いた本を英語に訳して本社の許可を取れという話になる可能性もあるのです。だから、コンサルティングファームのパートナーの人たちが書く本はそんなに出ていない。2003年に独立して、自分のリスクで自分の書きたいことが書けるようになったので、バーッと一気に書き始めました。
――BCG時代にはどのようなことを伝えたいと思われていましたか?
鈴木貴博氏: 僕が一番書きたかったのは、ビジネスや仕事って楽しいものだということでした。どちらかというと僕が追求しているジャンルはビジネスエンタメで、そのテーマをこの3、4年は書けるようになってきたと思います。