今後も読者に伝えたいことがたくさんありすぎる
――昨年、10月11月と連続して書籍を出版されましたね。
小阪裕司氏: 2冊セットで読んでほしいですね。流れとしては、おおよそ1冊分だと思うんです。それを、ちゃんと作りこむと当然500ページ位になってしまう。そうするとやっぱり手が出しづらいっていうところもあるでしょうから。10月の方は、その思考法っていう軸で、社会の変化に伴うビジネスの変化の方に重きをおいたんです。11月に出た本はどちらかというと、ちょっと抽象的な話ですので新書向きかなということで、こちらを角川さんにお願いして新書にしていただきました。新大阪から東京に行く間に読むみたいな、そういうタッチで書き進めました。そうすると、じゃあこれどうやって実践したら良いんだろうかっていう時に10月の思考法の本をじっくりと読んでいただける。もっとこの変化の先ってものを見たいと思えば11月に出た本を読めばいいわけです。
――2冊がリンクしてるんですね。
小阪裕司氏: そうですね。ですから、両方読んでもらいたい。どっちが先でも良いんですけど。
――それでは最後に、今後の展望をお伺いできればと思います。
小阪裕司氏: 本に関しては、お伝えしたいことって全然まだ書ききれてなくて。さっきの話のように、ぼんぼんと膨らんでいってしまうんで、もう書いている最中も、「これ、もうまるごと次の本にしよう」とかいうアイデアがわいてきて。本当は全部書きたいんですが、それを書き始めたらもう触りだけで2章分になっちゃうとか。今はとにかくお伝えしようとしてるものをまとめていかないといけないなというところですね。幸いなことに書いてくれと言ってくださる出版社の方も、少なからずいらっしゃるので。それとはまた別の系統の研究でアウトプットしてないものもあるので、それも書かなければならないしと、後が詰まっている状況ですね。日々研究と実践活動をやっていると、きりがないと言えばきりがないですが。書きたい本はあるんですが、それは後回しになってます。やっぱり書かなければならないものを先に書く。
――書きたい本と書かなければならない本と分けて考えていらっしゃるんですね。
小阪裕司氏: そう。それが私の出版に関する師匠の教えです。「著者たるものは書かなければならないものを、読者が読みたい様に書く。これが良い本だと」いうことなんです。書きたいものを書きたい様に書く本なんかだめだということを教わった。書きたい本と書かなければならない本って、実は違ったりするんですよ。あとは、自分がやりたいことっていうのは、実践者を増やしていって、新しい社会システムを構築しなければならないと思っています。既に私たちは、この知識体系を身内用語で「ワクワク系」と呼んでいますが、「ワクワク系」は、先に商業の世界で広がったんです。いわゆる小売りサービス業、卸し業ですね。それが良い形で連鎖して今製造業の方に徐々に広がってきています。それで、ここのところ日刊工業新聞さんとかものづくり系の皆さんとのジョイントなんかがあったりするなかで、価値を創造できる売り手と、価値の高いものを作れる作り手がきちんとね、価値創造の土俵で組み合わされば、さっき申し上げたことが起きるわけです。これを具体的に社会の新しいシステムとして作っていく。で、そこにどんどん仲間を呼び込んでいくという。それが本当にリアルの心豊かな世の中なんだということを仲間と一緒に広めていきたいです。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 小阪裕司 』